スマートフォンを中心に新規事業を推進する一方で、強い事業はより一層強化する。宮坂は「『孫子』にも『勝ち易きに勝つ』とある」と説明する。

「弱いものを直そうとしても、マイナスがゼロになるだけで、プラスにはならない。強みを伸ばしたほうが、大きなプラスを得られる」

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収益性向上への3つの取り組み

その視点から生まれた社内制度が「ヤフー番付」だ。ヤフーがかかえる150近いサービスを、閲覧ページ数、閲覧者数、収益などの観点から評価し4段階にランク付け。上位サービスは予算や人材など潤沢なリソースが割り振られる一方、下位のサービスは撤退や再編を検討する。ヤフーのトラフィックの4分の3以上を生み出しているというトップ20のサービスに、リソースを集中投下するための仕組みだ。

また、井上体制でのヤフーは、自社サービスにこだわる「自前主義」の方針が色濃かったが、自社の弱い分野については、その分野に強い他社と提携する、というオープンな方針に変えた。

料理レシピのサービスでは、自社サイト「ヤフーレシピ」を閉鎖し、日本最大のレシピサイト「クックパッド」へのリンクに置き換え。日用品の通販では、アスクルとの提携で通販サイト「LOHACO」をオープンさせた。ポータルサイトとしての価値を高めるため、最もよいサービスへの通過点を提供する場所だと割り切ったのだ。

宮坂は、就任1年目にして売上高と営業利益を共に2ケタ成長させるという目覚ましい成果をあげた。だが宮坂は「井戸の水を飲むときに、井戸を掘った人のことを忘れてはいけない」と自らを戒めてもいる。

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売上高の「2桁成長」が続いている

今期において売上高が伸びた最大の要因は、「ディスプレイアドネットワーク」という広告配信サービスの稼働だ。これは前の経営陣が4年がかりで準備していたもので、今回の好決算は新体制を迎える前から見通されていたものともいえる。15年間で培われてきた井戸は巨大だが、同じ井戸から水を飲み続ければ、いつかは枯れてしまう。新経営陣は水が潤沢に湧き出る新しい井戸を掘り当てる必要がある。宮坂はいう。

「新しい経営陣では、いま掘るべき『井戸』はなにか、という議論を重ねた。そのとき『EC(電子商取引)があるよね』という話になった。『ECって、まだいけるじゃん』と」

(文中敬称略)

(遠藤素子、岡田有花(記者会見)=撮影)
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