がむしゃらに働いているのに小遣いはごくわずか。妻と子どもはそっぽを向き、老親の介護も。こんなに苦しいのに誰もわかってくれない――。ベストセラー『考えない練習』で読者から圧倒的な支持を得た名僧が、あなたの日頃の迷いに対して、考え方の筋道をわかりやすく説く。

現代社会では、実際に労働状況が過酷で、なかなか休むことができないという方もおられるでしょう。しかし「休めない」のは、自分から休みを減らしている場合が少なくないように思われます。

一つには、周囲からそれとはなしに始終働くことを期待されていて、それを裏切れない。一度裏切ると相手との関係が悪くなってしまいそうなので休めない、ということがあります。得意先やクライアントの要望に応えようとして、休日返上で働いたりするケースです。

また、そのケースとも関連しますが、現代人、とくに男性は「仕事での成功や収入で、自分の価値を測る」という面が強くなりすぎて、休めない、ということも考えられます。「自分の業績アップ」=「自己価値のアップ」というわけで、自分の価値を高めたいがために、ほかのことすべてを後回しにしてでも業績を上げたいという気持ちにとらわれるのです。

業績を上げるのは、受験勉強の点数稼ぎと似通っており、最初はつらく感じたとしても、やがて自分の価値が数値によってダイレクトに表されることが快感になってきます。だから、とらわれやすい。しかしながら、受験勉強だけをあまりに必死でやっていると、性格が歪んだりすることがあるのは、ご存じの通り。業績アップにかまけるのも同様です。

人間も心身のメンテナンスをせずにこき使っていると、だめになってしまいます。仕事最優先で、家族や友人あるいは自分一人で過ごす時間をないがしろにすれば、結果として、自己の再生産のための力が落ちていってしまうのです。

体もですが心がきちんと安まると、また仕事にしっかり向き合えるようになります。そのためには、仕事のことを完全に忘れていられる時間をつくることが大変重要です。たとえ十分な休みがとれたとしても、休みの間に仕事のことや職場の嫌な人のことなどを考えていては、心は安まりません。休みの多少にかかわらず、どれくらい仕事のことから離れていられるかがポイントになります。

休みをむやみに犠牲にすることなく、また、どうしても休みがとれない場合には休みの質を高めるようにして、自らをリセットするようにいたしましょう。

月読寺住職・正現寺住職 小池龍之介
1978年生まれ。東京大学教養学部卒。正現寺(山口県)と月読寺(神奈川県)を往復しながら、自身の修行と一般向けに瞑想指導を続けている。『考えない練習』『ブッダにならう苦しまない練習』『もう、怒らない』など著書多数。
(構成=岩原和子 撮影=若杉憲司)
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