それでは、こうした地盤をどのように調べたらよいのか?

液状化予想図などは、東京都土木技術支援・人材育成センターが公表しておりインターネットでも見ることができる(http://doboku.metro.tokyo.jp/start/03-jyouhou/ekijyouka/index.htm)。ほかにも土地の変遷を航空写真で比較できる国土地理院の「国土変遷アーカイブ空中写真閲覧」(http://mapps.gsi.go.jp/)などのWebサービスや、古地図専門店で昔の地図を購入して現在の地図と比較するのも有効だろう(地図専門ショッピングサイト「マップショップ」など)。また、地名に着目し「台」「谷」「砂」や「さんずい」がつく土地なども、その地域の命名された時点での特性が含まれている場合が多い。一戸建て住宅の大規模造成地では、もともとある土地を削って造成した「切土」の土地か、新しく土を加えた「盛土」かによって大地震時に大きな違いを生む。東京都危険度判定の計算式によると、「盛土」は地震動の増幅率を1.2倍にしているとのこと。このことは、揺れの強さだけでなく、液状化や土砂崩れにも関係する。同じ造成地でも「切土」と「盛土」が混在している場合があり、同条件で同じ値段であるなら「切土」を選ぶべきだ。

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同じエネルギーの揺れでも、軟弱地盤では震度が1.5増す

地盤のほかにも、防災的な観点から地域の特性について考えなくてはいけない。自分の住むマンション、家が安全であっても、周囲が危険では元も子もない。とりわけ木造建築や延焼阻止率の低い飲食店がないか、あるとすれば避難経路が確保できるかどうかを最低限チェックすべきだ。また、道路が狭く火災発生時に救急車両が入ることができない地域、行き止まりの多い地域は、緊急時に命を危険にさらすおそれがある。これから住もうとする家だけに意識が集中しがちだが、冷静な判断が必要だ。

津波や高潮についても事前に調べたほうがよい。「東京湾には津波はこない」といわれている。甚大な被害が出た関東大震災では、相模湾で津波被害が発生したが、東京湾では大きくても木更津で約1.8メートル程度であったとのこと。江戸時代の元禄と安政の大地震でも1から2メートル程度(横浜は3から4メートル)であったという。

防災科学技術研究所の防災基礎講座では、津波の特徴として「湾内が広く奥深くて、海への出口が狭いような閉鎖的内湾においてこの現象が著しくなります」と述べられている。東京湾では現在、主に高潮対策として5メートル以上の堤防や水門による対策が進んでいる。同研究所の水谷武司氏は「ほかにも大阪湾で高潮の危険が指摘されている。都市機能の主要部分は1階部分にあり、津波であろうと高潮であろうと、3メートル水位が上がるだけで、東京も大阪も名古屋も大きな被害を受ける」と指摘する。

水谷武司
1938年、名古屋市生まれ。60年京都大学経済学部卒業。66年東京都立大学理学部地理学科卒業。国立防災科学技術センター災害研究室長、千葉大学理学部教授を経て、現在、防災科学技術研究所客員研究員。著書に『自然災害と防災の科学』など。
(撮影=奥谷 仁)
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