高層マンションは危険がいっぱい

では、ビル・マンションなどの危険性はどのように見たらいいのか。

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建物の平面図でわかる危険度

「旧耐震基準(81年以前)」は危険性が高いが、建物の形状も大きな要素といえる。ピロティ形式と呼ばれる1階部分が駐車場や店舗になり壁が抜けている形状。これは壁により地震動を分散できないため1階部分の柱などに力が集中し、「圧壊」する可能性があるという。また、L字型やコの字型など不整形な建物はL字のコーナー付近などが局所的に崩壊するおそれがある。

それでは耐震化に対処できれば安全なのか?

と聞かれれば答えは否だ。木造住宅密集地では、木造住宅を耐震化しても火災による延焼で被害が大きくなる可能性は高い。このことは密集地内に位置するビル・マンションも同様といえよう。木造密集地の問題解決は、建て替えによる不燃化・空地の確保を進めなければならず、所有者は自治体と協力して、改良事業や細街路の拡幅、行き止まり道路の解消を進める必要があろう。ちなみに、東京都の火災危険度では、1位が品川区豊町5丁目で1ヘクタール当たり24.34棟が全焼で断トツ。2位・新宿区赤城下町が17.63棟、以下、3位・品川区二葉3丁目、4位・新宿区若葉3丁目、5位・品川区豊町6丁目である。

また、高層マンションやビルは、耐震化がなされて倒壊の可能性がほとんどなくても、長周期地震動による室内での被害も無視できない。長周期地震動とは、通常の揺れと違いゆっくりと揺れる地震動のことで、これが高層マンションが揺れる周期と共振すると、ゆったりだが大きな揺れとなり室内の被害が拡大する。

兵庫県三木市の防災科学技術研究所・兵庫耐震工学研究センター(Eディフェンス)には、実物大の建築物に3次元の地震波を与え、地震により建築物が破壊されるさまを再現する実験設備がある。ここでなされた「震動台実験」では、地上21階建てを模した構造物を建て、室内での被害状況を検証している。室内にある背の高い棚などはすぐに倒れて扉をふさぎ、オフィスのコピー機などは何度もぶつかりながら室内を駆け巡り「暴走する凶器」となる。高層ビルの「高層階」は、危険がいっぱいだ。

東日本大震災では、高層マンションでの生活上の不安も指摘されている。乳幼児をつれて55階まで休み休み階段を上り30分もかかったり、高齢者が外出できなくなったという報道もされている。もし火災になれば逃げ道は上か下かしかない。停電になり非常用発電が起動しても数時間しかもたないのではあまり役に立たない。ましてや、エレベーターが故障しては致命的だ。ほかにも、エアコンが止まり暑くなっても窓が開かない、などなど考え出せばきりがない。普段は居心地のいい高層マンションだが、防災という観点から考えると弱点が多い。

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