「論理的に正しく、企業哲学に合致し、商売になる」。この3条件を満たしているなら、たとえ上司が反対しても突き進むべきだ、と僕は考えたのだ。

もちろん、会社によってはそれを部下の独走ととって、歓迎しないところもあるだろう。自分の会社が、せっかくのオーナーズ・マインドを生かしてくれないとしたらどうするか。

まず、いまのポジションでやれることをやり尽くすのだ。上司を説得できなければ社長に直訴してもいい。やるだけやってもダメだったときには、2つの選択肢がある。あきらめるか、会社を去るか。

もし、あなたのビジネス・プランが3条件に合致した正しいものであったら、必ず応援してくれる人が出てくるだろう。僕自身、何度も失敗をしているが、土俵際まで追い詰められ、それでも頑張ろうとしていると「それはおもしろい。やってみい」と言ってくれる人が現れた。

人間、「絶対にやりたい」と思いつめれば、100%は無理でも50%くらいのことは成就する。できないのは簡単にあきらめるからだ。誰でも人生は一回限り。「文句を言わんと、やれ!」。僕が言いたいのは、このことである。

(07年4月30日号 当時・最高顧問 構成=面澤淳市)

楠木 建教授が分析・解説

やり抜くためには協力者の存在は欠かせない。協力者、賛同者を得るために重要なことの一つは論理的に正しいかどうかである。「こういう結果をもたらすだろうな」と皆が自然に思えるものがなければ賛同は得られないし、やり抜けない。

1940年代にフランスからの独立を掲げてベトナム革命を指導したホーチミンは、後に卓越した論理力で「こうすれば我々だってアメリカに勝てる」と民衆を鼓舞し続け、長きにわたるベトナム戦争に勝利した。逆に先の大戦で日本が戦い抜けなかったのは、主観的には「正しいことをやっている」と思っていたにせよ、最後は「神州不滅」といった精神論に陥り論理的な思考が不十分だったからにほかならない。

一橋大学大学院国際企業戦略研究科(ICS)教授 楠木 建
1964年、東京都生まれ。92年一橋大学大学院商学研究科博士課程修了。2010年より現職。著書に『ストーリーとしての競争戦略』『戦略読書日記』。