「前倒し育成」が注目されている

そこで「前倒し育成」で、幹部候補の女性を育てようという動きがあります。

ある小売業の大手を取材したときに、同じことを言っていました。「ちょうど店長になるぐらいで、女性はみな出産で辞めてしまう。前倒しで店長に昇進させるようにすると、欲が出て辞めないで復帰してきてくれる」ということです。

産んで活躍するワーキングマザーの先輩たちも「出産前までは欲張って経験を積め」と言います。例えば小さなグループのリーダーなどを「私には無理かな」と思っても躊躇わず引き受ける。そうすると、出産して復帰した後「リーダーに」と言われても、経験があるので、初めてリーダーになるよりもハードルが下がるのです。

例えば「早期」を5年とします。22歳(大卒)で入社したとして、5年たてば27歳。ここまでいろいろな経験を積んで、28歳から30代前半に産む。育児休業の1年も「マイナス」ではなく、「経験として+」にとらえる。

28歳に産んで、1年後に復帰しても、まだ29歳です。

すでに様々な経験を積め込んでいるので、復帰後なるべく早くに「幹部養成コース」にのせる。「前倒し育成」とはこのようなイメージでしょう。

しかし、この「早期育成」を考えると、逆に「28歳までに産んだらもうコースから脱落する」ということになります。真面目な女性は「絶対に28歳までは産めない」とプレッシャーに感じるでしょうし、28歳までに産んだ女性は「もうコースを外れた」と20代にして期待されなくなってしまう。幹部候補とまで目された優秀な女性がそれではもったいない。

そして、妊娠の完璧なコントロールは不可能です。どんなに気をつけても「できちゃう」ときはある。さらに、人間がそれほど妊娠しやすい生き物ではないということは、このシリーズの最初で説明しています。まだ若いからと安易に中絶して「あれが最後のチャンスだったのだ」と後悔する女性もいます。

「いつか子どもがほしい」と思っている人はそのチャンスを逃さない方がいい。

いつ産んでも大丈夫という社会にならなくては、大勢の女性が活躍して出世するなんて、夢のまた夢です。