いい意味で予測を裏切る「コンシート技法」

【第4の鉄則】予測を裏切る「コンシート技法」

スピーチやプレゼンで、まず登場した瞬間に聞き手が予測を裏切られてハッとしたら、これぞまさしくたった“一瞬”で相手の心をつかむハットトリック(hat trick)です。

パフォーマンス心理学では、これを「コンシート技法」と呼びます。「コンシート」を直訳すれば「あざむき」ですが、これは悪い意味ではなく、素晴らしい「コントラスト効果」を出すための技法として使われています。

日本のプレゼンに、IOC審査委員は、出端から予測を裏切られました。日本流の男性優位かつ年功序列のプレゼン順でくるだろうと思っていたら、それが見事外れたのです。先頭のスピーカーもその次も、にこやかな女性だったのですから。

日頃笑い話ばかりしている上司が急に真顔になってシビアな話をしたり、逆にいつも真面目なことばかり言っている経営者が唐突にジョークを言うのも、この類です。

【第5の鉄則】10分間ルール

日本のオリンピック招致プレゼンでは、それぞれの持ち時間は平均すれば1人10分前後でした。誰かが予定より長くしゃべってしまったら、あとの誰かが時間を削ることになります。

私のパフォーマンス心理学の実験では、相手の耳に心地よく聞こえる話のスピードは、1分間あたり266文字(日本人の場合/常識的に漢字がほどよく含まれている)です。

今回は、1人のプレゼンターがだいたい4~5分に話を抑えて、映像や音楽などをそこに有効に加えました。物語的なものからメカニックなものまで、バリエーション豊かな映像が効果的に使われたのです。

社内会議などでも話がなかなか終わらない人がいますが、おのおのの持ち時間をきちんと守るのは、チームプレゼン必勝のミニマム条件と言えます。

【第6の鉄則】三本絞り

人間の頭はどこまで記憶できるか? アメリカの心理学者の研究によると「7つまでは記憶できる」という説もありますが、一般的には3つくらいのほうが人に聞いてもらえます。

竹田恆和会長が、これを採用しました。

○運営の安全
○祝祭
○革新

短時間でポイントを6点も7点も次々に話されると、それぞれの印象が薄くなります。そのため、「三本絞り」は、短いプレゼンの必勝法のひとつなのです。