東日本大震災の被災地域で
工場立地が大幅増の実績

先の「工場立地動向調査」に戻ると、東日本大震災における被災地域への立地が大きく伸びていることも目を引く。

災害救助法の適用を受けた7県(東京を除く、青森・岩手・宮城・福島・茨城・栃木・千葉)での工場立地件数は160件(前年同期は88件)、立地面積は482ヘクタール(前年同期は155ヘクタール)に上った。このうち、福島県のメガソーラーを除く工場立地件数は26件(前年同期は14件)、立地面積は28ヘクタール(前年同期は11ヘクタール)と、順調な増加傾向を示す。一方、千葉県はメガソーラーを除く工場立地1件あたりの面積が2.36ヘクタールと広く、全国第4位。大規模立地が目立っている。

チャイナプラスワンとして
国内地域の施策にも注目を

むろん全国のあらゆる地域が、世界的不況や超円高に見舞われるなか、企業誘致の努力を続けてきた。国も2007年に「企業立地促進法」を施行。自治体は地域産業の活性化を目指す「基本計画」をつくり、国の同意を得れば一定の支援が受けられる。立地企業は、施設の立地や事業の高度化を行う計画が都道府県知事に承認されると、優遇税制(特別償却)や工場を建てる場合の緑地面積の特例、人材育成制度など、最大で8つの支援措置の適用を受けられる。

地域が展開する優れた誘致策の数々は、『国内投資促進のためのベストプラクティス集』(経済産業省)に掲載されている。これは、企業の立地や投資の障壁を除去し、企業の負担を軽減するため、立地迅速化などに向けた自治体の取り組み事例を広く紹介する目的で作成されたものである。

規制手続きの工夫による迅速化等の例では、自治体トップの強い意志による迅速化で、従来30カ月も要した手続きをわずか10カ月に短縮したケースがある。このほか、部局横断組織を設置したり、問い合わせに対する24時間以内の回答を徹底するなど、企業にとって実効性ある真のワンストップサービスを実現したケースが見られる。1人の職員が異動後も立地企業を支えるパーマネント・スタッフ制度を設けたり、立地企業に無料人材あっせんを行うなど、アフターフォローを充実したケースもある。

冒頭で紹介したとおり、日本経済回復への兆しが強まって、企業の景況感は好転し、設備投資への意欲も高まりつつある。円安が長期化するとの見通しに立ち、生産を国内回帰させる大手家電・エレクトロニクスメーカーなどもある。チャイナプラスワンという課題が深刻化するなか、工場の国内立地を検討中の企業も少なくないはずだ。各地域の積極的な取り組みを吟味し、自社のさらなる成長にとって最適な用地を選択することが一段と望まれる局面である。