南部正司(バレーボール全日本男子監督)

なんぶ・まさし●1967年、大阪府大阪市出身。大阪商業大学付属高校を経て大阪商業大学に進学。90年に同大を卒業後、日新製鋼に入社。97年、日新製鋼のバレーボール部解散に伴い、松下電器に移籍。2002年に現役を引退後、松下電器のコーチに就任。07年パナソニックパンサーズの監督に就任。

異例の監督交代である。前任の米国人監督が1年足らずで解任され、V・プレミアリーグ男子のパナソニック監督が全日本男子の新監督に就任することになった。

その南部正司が緊張気味に漏らす。コトバに覇気が宿る。

「このタイミング、現状から考えると、厳しい状況でありますが、自分の経験を生かして、なんとか男子バレーを復活させたい」

1972年ミュンヘン五輪で金メダルを獲得した全日本男子もこのところ、低迷している。昨年9月の世界選手権アジア最終予選では韓国に完敗し、それまで14大会連続で出場していた同選手権の出場権を初めて逃した。同11月のワールドグランドチャンピオンズ杯でも5戦全敗で最下位に終わった。

指導方針と現場の力のギャップもあり、浮上させるためには、もはや監督交代しかなかった。そこでの46歳の登板となった。2016年リオデジャネイロ五輪の出場権を最後に争う世界最終予選まで2年余しか時間がない。

「確かに強化する上で、残された時間は短いかもしれません。ただオリンピック予選まで、ことしのアジア大会、来年のワールドカップとチャレンジする大会がある。それ以外でも海外のチームと対戦することで、全日本は必ず、いいカタチをつくれると確信しています。時間は大きな問題ではありません」

目指すバレーボールのスタイルが『攻防一体』という。日本バレーの世界に誇れる部分は守りの部分。レシーブの部分だと南部新監督は言うのだ。

「サーブレシーブ、ディグ(スパイクレシーブ)をもう一度、世界一にしたい。ただ守りが良くても、攻めなくては勝てない。相手の攻撃をかわして、次の攻撃に移る。守りから次の攻め、このへんのところの技術を追求してチームをつくっていきたい」

既に全日本のデータは分析している。結果、強化ポイントは、サーブとレシーブに置いている。積極的に欧州や南米などのチームと練習試合する中で、「世界の高さ」に慣れる意向も示した。頭の中には、既に「復活シナリオ」ができあがっている。

大阪府大阪市出身。大阪商業大学を経て、日新製鋼などでアタッカーとして活躍した。95年ワールドリーグでは全日本としてプレーした。引退後は指導者の道を歩み、07年にパナソニックの監督となった。

09~10年シーズンと11~12年シーズンはリーグ、全日本選手権、全日本男女選抜の3冠にチームを導いた。火中の栗を拾うカタチだが、「覚悟はできている」と言い切る。好きなコトバを聞けば、しばし熟考し、「ジハンジンコ」と答えた。「自反尽己」と書く。

「本を読んで、心に響いたのです。ジハンジンコ。人のせいにするな。すべて自分の責任ととらえ、自分の全力を尽くすということです。ジハンジンコ。チャレンジです」

女子に続き、男子も『バレー・ニッポン! 復活』となるか。自反尽己を胸に、南部新監督が勝負をかける。

(松瀬 学=撮影)
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