男性は「おカネ」が気になる

対する男性はというと、待機児童の解消や若年層の雇用対策には男女共通の強い支持があったが、ベスト対策になったのは高等教育の無償化だった。

今回の男性回答者は半数が子どものない人で、女性回答者との間に差はあまりなかった。ただ男女の別なく全体で見ると、これは子どもの人数が増えるとニーズが高まる傾向があった。

もともとは海外に見られるので入れた選択肢である。日本では夢のような制度だが、高い税金を徴収してそれを国家が再配分するフランス、北欧などは、大学卒業までに個人の経済的負担はほとんどない。先進国では高学歴化が進み、子どもに大変な教育費がかかるので産み控えが起きやすい。「若者の教育は社会で負担しよう」という思想を持つ国が同時に少子化を挽回した国であることは決して偶然ではないだろう。

男性は、3位以下も、出産や育児にかかる医療費の無料化、税制上の優遇、若年層の雇用安定化、育児手当の高額化など経済に関わる支援がずらりと並んで女性のランキングとは大きく違う顔ぶれとなった。

子どもが生まれた時の負担感として、女性は「子どもも仕事も」という生活ができるかどうかが一番不安。そして男性は、わが子を一人前に仕上げる資金があるかどうかが最も不安なようだ。

この差はどうとらえるべきか

実は、回答者を実際の人口比率に合わせている関連の調査では、ここまでの男女差は出ていない。たとえば内閣府が2013年に報告している「子ども・子育てビジョンに係る点検・評価のための指標調査」の集計表を見ると、ワークライフバランスへの不安はやはり男性の方が女性より少し低いが、経済的不安は女性もかなり強く男性と同程度だ。ベネッセ教育総合研究所の「未妊レポート2013~子どもを持つことについての調査」(2013年)も同様だ。

前述したように、今回は都市部に住む正規雇用労働者の女性が多く回答しているので、この男女差はその影響を受けているのだろう。でも都市部の働く女性やそのパートナーは、特にこの結果を受けとめてほしいと思う。

私は、男性も女性も共に、それぞれの立場から目につきやすい、重要なニーズを指摘したと思った。少子化対策は、性別、居住地域、雇用形態、年齢、すでにいる子どもの数、経済的余裕がばらばらな人たちがそれぞれに違うものを求めるが、誰でも自分の不安に合った政策に出会えるように多様なメニューがあることが理想だ。

男性は「経済的な責任」、女性は仕事をしながらも「子どもの世話をする責任」をより強く自覚しながら育児をイメージしているようだが、それは自然な性差かもしれない。これはカップルが子どもを持つ相談をする時に思い出してもらって、「彼(彼女)は、ここに強い不安を感じているのか」という相互理解や思いやりにつなげてほしい。