霞ガ関の夏の人事が一気に動き出した。枝野幸男官房長官が東日本大震災後の今年5月、中央省庁の局長級以上の幹部人事凍結を要請していたが、7月15日の閣議で総務省の政策統括官などの人事が承認されたことで、凍結が事実上解除されたのだ。

今夏の中央官庁人事で特に注目されるのが警察庁だ。

警察官僚の序列は、安藤隆春長官(1972年入庁)をトップに、ナンバーツーの片桐裕警察庁次長(75年入庁)、その下が76年入庁の池田克彦警視総監と米田壮官房長。このうち池田克彦警視総監については、池田氏自身がかねてより後進に道を譲ることを周囲に明らかにしてきたことから、今夏の退任は既定路線で、後任には警察庁の樋口建史生活安全局長(78年入庁)が有力視されている。

ところが安藤長官ら警察庁首脳人事のほうは、5月の官房長官談話の影響でいったん人事がストップしたことから、にわかに視界不良に陥った。長官を2年以上務め、順当なら今夏退任のはずの安藤氏の続投の可能性が強まったのだ。「警視総監は機構上、東京都という自治体警察のトップ。退任しても官房長官の凍結要請に抵触しないが、中央省庁の一つである警察庁の首脳の異動は抵触する。庁内では、枝野談話を奇貨として安藤氏が長期政権を敷くのではないか、という憶測が広がった」(警察庁関係者)

安藤氏は、橋本龍太郎内閣の総理秘書官を務めるなどエリートコースを歩み、警察庁長官就任後は山口組の弱体化に執念を燃やしてきた。

「権力志向は旺盛。庁内では、安藤氏の目標は漆間巌元警察庁長官だと言われている。漆間氏は警察庁長官を3年務めた後、官僚トップの内閣官房副長官(事務)になった大物だ」(警察庁OB)

だが、こうした噂に過敏に反応したのが警視庁だった。首都の安全を守る警視庁はほかの道府県警より格上で、警視総監はかつて警察庁長官に次ぐポストだった。ところが1995年の国松孝次長官狙撃事件の捜査で、警視庁が捜査情報を警察庁に報告しなかったことが原因で警察庁と対立し、当時の警視総監らが引責辞任。この頃から警視庁の地盤沈下が進み、現在では、警視総監は警察庁ナンバースリーの官房長と同格扱いに甘んじている。「ただでさえ、“不遇な扱い”に不満を募らせていたところに、池田総監の退任と安藤長官の続投の噂が広まった。“池田総監だけが勇退して安藤長官が交代しない場合、総監の序列がさらに下がってしまう”という不満が警視庁内に広まった」(警視庁関係者)

長官が代わらないと、その下の次長、官房長もむろん交代しない。そんななかで、もし総監だけが退任し、米田官房長の2年下の樋口生活安全局長が総監に就任すると、警視総監は官房長よりも年次が若い官僚が就くポストになってしまう。つまり警察庁の局長と同格扱いになるということ。これに対し“総監の格落ちはおかしい”と警視庁生え抜き組が反発を強めていた」と警視庁関係者は言う。

かつてのように警察庁長官と警視総監が同時期に退任すれば不満の芽は摘まれるが、もし枝野長官の凍結解除発言後も安藤氏が続投した場合、警察庁と警視庁の間に新たなシコリが生まれそうだ。