公式は覚えず、理解しろ

この記事を読んでいる読者は、きっと子供の教育に熱心な親御さんが多いと思う。そこで我々が声を大にして伝えたいことがある。

どこの受験塾でも解法を手っ取り早く教えるため、基礎演習や有名校の過去問題を繰り返し解かせている。しかし、そういった反復練習ばかりの「徹底的に鍛えているヤツ」を、灘も筑駒(筑波大学附属駒場)も開成も、そして東大も真っ先に排除したいと考えているということだ。事実、超難関校の入試問題は、いかにそういったヤツを入れないようにするかといったグレードの高い問題が出題されている。

中学受験において、試験日までの期間内に解き方をテクニックとして教え、覚え込ませることを、我々は「学力ドーピング」と呼んでいる。

筋肉増強剤と同じく、学力を一時的に増強するが、「本物」ではない。難関中に合格することもあるが、あとで必ずつまずく「ハリボテの実力」だ。受験塾による“学習の植民地”から脱し、真の学力を身につけるには、「大事なことは覚えてはいけない、理解する」のだ。

解法や公式や定理といったものをただ記憶して覚えるから、忘れる。いつも「根拠は何か」「どのような仕組みか」を意識して納得と理解を伴う学習をするのだ。しかし本番の試験では限られた時間の中で問題を早く正確に解くために解法や公式を知っていることは必要となるので、最終的には「理解したうえで、覚える」ことが推奨される。

情報は頭の外にある。それが頭の中に入ると知識となり、さらにそれが人格の芯に染み込むと知恵になる。

学力もまったく同様で、知識はメンテナンスを怠るとすぐに忘れてしまうが、知恵は忘れない。自分のものとなっているからだ。そうした基礎があるから応用が利く。思考判断の座標軸を自分の中に持つことができる。初見の難問であろうとも、そうした知恵を総動員することにより攻略可能となるのだ。