「偏差値とゴマすりのうまさは比例します」。厚生労働省の元キャリア官僚として、東大法学部出身の秀才に囲まれてきた兵庫県立大学大学院応用情報科学研究科教授・中野雅至氏はこう断言する。大物政治家たちを籠絡するエリートたちの技を開陳しよう。

ほめたつもりでも相手が嫌悪感を覚えてしまったら逆効果。「よっ!社長」といった安易な表現は避けたほうがいい。また、読んでもいない資料について「部長の作ったあの資料は完璧ですね」と言うのも考えもの。先方に突っ込まれたらすぐ嘘がばれます。

学歴もデリケートな問題です。たとえば、慶応大学経済学部卒を讃えようとしても、まわりが東大卒だらけの環境だと微妙。髪型や体型についても、当人がこちらの思っている以上に気にしていることがままあるので慎重に。「すごくきれいな女性と歩いていましたね、うらやましい」と女性関係に触れるのも気心がしれていないときびしい。

では、殺し文句はどうでしょう。

官僚時代に比較的好評だったのは、四字熟語。博学多識な元受験秀才には、ちょっと気の利いた四字熟語を会話の合間に入れる。たとえば、「課長の今回の戦略は遠交近攻(遠くと交わり、近くを攻撃する)ですね」「将来は鶏口牛後(大きな組織の末端にいるよりも、小さな集団の長になったほうがよい)でいきましょう」といった具合です。

べたなほめ言葉でも、ひとつエッセンスを加えることで見違えることがあります。筋骨たくましい男性に対して「がっしりした肩ですね」と言っても動じませんが、「オリンピックスイマー並みの肩幅ですね。どうすればそんな肩幅をつくることができるんですか」とほめるとどうでしょう。会話が広がり印象も俄然よくなるかもしれません。

残念ながら、すべての人に通用する鉄板ワードはありません。鈍感な人に「きれますね」と言えば効くけれど、秀才タイプには通じません。でも、共通しているのは、本人が自覚しているポイントを突けば誰でもぐらつくこと。以前、上司に資料の修正をやってもらったとき、「これだけ少ない修正で見事に直るのは課長だけですね」と言ったら相手の機嫌がものすごくよくなったことがあります。相手の言いたいところをぐっと掴んで、そこを言葉で返す。これが鉄則です。

いいゴマすりとは、相手のためにエネルギーを使っていることをわからせること。そのためには相手を洞察し、ピンポイントをつくことが大切です。