高齢の親が脳や心臓の病気、骨折などで入院したら……。年末年始に帰省して「親の介護」が頭をかすめた人も多いことだろう。いったん病気になると、杖や介助がないと自由に動けなくなることも珍しくないからだ。実は、万一親が倒れた場合、身内がいかに早く関連する制度の「手続き」をしてあげるかで、親の「生活の質」に大きな差が出ることをご存じだろうか?

たとえば、高額な医療費の自己負担限度額を超えた分が支給される高額療養費。その限度額を超える分を最初から支払う必要をなくす限度額適用認定証。自力生活が難しくなれば介護認定。後遺症が残るなら身体障害者認定も視野に入れることとなる。これらの制度は、ほとんどが申請しなければ何も始まらないものばかり。いくら健康・介護保険料を滞りなく支払っていても、誰かが動かない限り何も始まらない。

また、その手続きはどれも複雑で時間がかかる。介護認定を例にとると、まず保険者(国保なら住民票のある自治体)に申請を出す。その後本人への調査が入るが、結果が出るまで1カ月近くかかる。つまり、退院後すぐに介護保険を利用したサービスを利用したければ、入院中に申請を出すのがベストだが、遅れる人も多い。特例として認定前からサービスを利用することもできるが、認定されなければ全額自己負担になるし、認定されても申請をした日までしか自己負担の減免はさかのぼることができない。

身体障害者手帳の申請になるともっと話は複雑だ。自治体への申請はもちろん、主治医(指定医)に診断書・意見書も依頼しなければならない。また、手帳に貼るための本人の写真も撮る必要がある。これが意外に面倒で手間がかかる。さらに、手帳が発行されても、駐車禁止等除外標章は所轄の警察署、NHKの受信料減免はNHKや自治体、有料道路通行料金割引は自治体の福祉窓口などに申し出る必要がある。いや、そもそもこんな制度があること自体、高齢者は知らないし、自分で手続きすることも難しい。身内がしっかり調べ、動いてあげることが必要だ。