突っ込まれる「スキ」を見せない

日本の会社の場合、社員一人ひとりの職務範囲が明確に定められていないため、総合職と一般職と派遣社員のやっている仕事に歴とした差がないのに、総合職だけが給料が高いなんて現象も散見されます。

つまり、雇用形態が「身分制度」になってしまっている。そのため、その差異をめぐっての妬み、嫉みを招きやすいのです。

だから益々、「富める者」は、人一倍腰を低くしていないと(それが実に難しい)「女社会」ではサバイブできません。

嫉妬を買わないコツは、冒頭で紹介したワーキングマザーの「生きる知恵」よろしく、ちょっと卑屈なくらいに自虐トークをする――これが最も有効な手段だと思われます。

具体的には、「セレブ妻」なら、あえて夫の悪口や愚痴を言う。子どもの出来がいいなら、子どもの学校の話は一切しない、フェイスブックでリア充ぶりを過剰に見せつけない、などです。

また、同僚に密告されても仕方がない「悪癖」を辞めて、スキを見せないことも重要です。

私の知り合いのあるすご腕ワーキングマザーは、取引先と「打ち合わせ」のため、飲食店に行き飲み食いすると、本当に「打ち合わせしていた間」の飲食費しか、会社に請求しません。

「打ち合わせ」が終わった後も同じ店で飲み続ける場合は(だいたいの打ち合わせは10分~20分で済みますよね)、店員さんに、そっと会計を閉めてもらい、コッソリ社費で支払いを済ませ、残りの飲食費は黙って自腹で支払うのです。

もしかしたら、このくらい他人に細心の注意を払うことが、「富める者」の義務なのかもしれませんね。

佐藤留美
1973年東京生まれ。青山学院大学文学部教育学科卒。出版社、人材関連会社勤務を経て、2005年、企画編集事務所「ブックシェルフ」を設立。20代、30代女性のライフスタイルに詳しく、また、同世代のサラリーマンの生活実感も取材テーマとする。著書に『婚活難民』(小学館101新書)、『なぜ、勉強しても出世できないのか? いま求められる「脱スキル」の仕事術』(ソフトバンク新書)がある。東洋経済オンラインにて「ワーキングマザー・サバイバル」連載中。