「差し出された椅子」にはとにかく座ろう

この講義は、大学生が「就活前に知りたかった」「就活に入ると、目の前のことだけでいっぱいいっぱいになっちゃうので、20歳ぐらいで聞きたい」という講義です。

くわしくはぜひ『女子と就活』(中公新書ラクレ)をご覧いただきたいのですが、今は就活で「先のことなんか考えられない」という人も、子どもがほしいというライフプランがある人は、20代の前半に一度考えてみてください。「この会社で、この働き方で、どうやったら産めるのか」ということを。逆立ちしても難しいと判断した場合は、第二の就活時に「産める就活」を考えても遅くないと思います。

環境はどんどんよくなっています。以前は「大卒時に働く覚悟がある女性」だけが、出産を超えて残ってきましたが、ここ数年は全く違います。「両立なんか考えてもいなかったけれど、周りの人が当たり前に産んで働いているので、なんとなくそういうものかなと思って……」そんなことを言うワーキングマザーが確実に増えています。環境も重要です。

今は「就活で精いっぱい。そんな先のことまで考えられない」という人は、とにかく「産んでいる女性がたくさんいる」ところを選んでくださいね。そういう企業では、産む環境ができているからです。

今は、ただ「続ける」だけでなく、「産んで活躍する女性」が求められています。皆さんの世代ですと、望んでいなくても「昇進するポストがきてしまう」こともあるかもしれません。その時は、「無理」と言わず、「ありがとうございます」とニッコリ笑って、差し出された椅子にまず座ってみてください。

大事なのは自分で自分の壁をつくらないこと。「女子大だから、無理」「両立できないから無理」「あの人みたいにスーパーウーマンじゃないから無理」……。「無理の壁」がみなさんの中にはたくさんあります。でもちょっと先を行く先輩の話を聞くと「意外と壁はなかった」と気づくのです。

賢く、したたかに、働き続けてください。もう、1人の男性に人生をかけるのはリスクが大きすぎる時代なのですから。

白河桃子
少子化ジャーナリスト、作家、昭和女子大女性文化研究所特別研究員、大学講師
東京生まれ、慶応義塾大学文学部社会学専攻卒。婚活、妊活、女子など女性たちのキーワードについて発信する。山田昌弘中央大学教授とともに「婚活」を提唱。婚活ブームを起こす。女性のライフプラン、ライフスタイル、キャリア、男女共同参画、女性活用、不妊治療、ワークライフバランス、ダイバーシティなどがテーマ。講演、テレビ出演多数。経産省「女性が輝く社会のあり方研究会」委員。著書に『女子と就活』(中公新書ラクレ)、共著に『妊活バイブル 晩婚・少子化時代に生きる女のライフプランニング』(講談社+α新書)など。最新刊『格付けしあう女たち 「女子カースト」の実態』(ポプラ新書)