新卒の社歴の浅いスタッフのなかには、定年制撤廃に対してモチベーションの向上につながるといった反応を示す者もいます。安定した職場づくりが求められている証しと言えるでしょう。課長以上の役職者に対しては、役職の勇退制度などを適用し、65歳になったら新たに社内起業にチャレンジできるようなチャンスも提供していきたいと考えています。

定年制の廃止は、働く側に、「いつ、自分は仕事を辞めるのか」を決める権限を与えることです。これまでなら、会社に決めてもらう人生が当たり前であったものを、自分で決める生き方の選択肢として提示することになります。自分の人生を自分で決める。その意思を持ったスタッフが一人でも多く生まれることに期待しています。

私は、65歳を過ぎてからも能力を伸ばすことができると信じています。会社ができることはその機会を与えることと、能力を伸ばすために必要な研修の仕組みを整備することです。会社は、母親の胎内のような包み込む力を持った、安心できる存在でなければなりません。一度退職した社員も再び戻ってこられるくらいの懐の深さが必要です。

高齢社会の進展を見据えると、やがて、高齢者の介護を高齢者が手がける形を想像することができます。つまり、できる者が弱者の救済に力を注ぐ社会です。年齢は関係ありません。介護事業の将来を「夢」のある世界にしていくためにも定年制の廃止は必然だと考えています。

ケア21社長 依田 平
1952年、長野県生まれ。法政大学法学部卒。76年ぎょうせい入社。79年エポアンドエディ設立。93年ヨダゼミイースト設立。99年ケアにじゅういち(現ケア21)に商号変更。2009年の介護報酬3%アップ分の全額還元や処遇改善交付分の全額還元など、業界に先立って従業員の待遇改善にも取り組む。
(中村聡樹=構成 和田久士=撮影)
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