電動アシスト自転車で3位、そして自転車業界の雄といえばブリヂストンサイクルである。国内の自転車販売台数ではシェアトップを誇る同社の戦い方を「ニーズ対応」と表現してみよう。マーケティング1部 商品企画課長の瀬戸慶太氏はこう話す。

「ママチャリの前後に子供を乗せているお母様方は昔からたくさんいたので、子乗せ自転車の開発はかなり前から行ってきた。最近はより楽に、そしてよりおしゃれさを求める傾向があります」

図を拡大
各メーカーのポジショニングマップ

同社の子乗せタイプ自転車ブランド「アンジェリーノ」シリーズは、電動アシストが付かないもの、電動アシスト付きのものともに、定番商品として定着していた。しかし自転車業界の雄は安穏とはしていない。

「代官山や恵比寿といった都心で、小さいタイヤの自転車に自分でインポート物のチャイルドシートを付けて乗る人を見かけるようになりました。こういった現象を見過ごさず、よりおしゃれな自転車をと思い、雑誌VERYと共同で新しい自転車を開発しました」(瀬戸氏)

これがママのおしゃれさとパパの育児参加を両立したデザインの「ハイディビー」(11年発売)である。

「イクメンという言葉が出始め、男性がベビーカーを押したり、だっこ紐をしたりするのが当たり前になっています。旦那さんが乗ることも視野に入れました」(瀬戸氏)

雑誌側からのアプローチでこのプロジェクトは始まった。業界外の人の目は新鮮だったという。

「頭を悩ます提案もありました(笑)。またぐ部分は、通常斜めになっているのですが、ここをまっすぐにしたいとか。それだと女性が前からまたげないんです。あとは、ブレーキのワイヤなど色がばらばらだったのを統一してほしいとか。そういうのはなるほどと思いました」(同)

誌面で開発ストーリーを掲載した効果もあり、当初計画の年間3000台が1万台まで伸びた。自転車屋として、徹底的に自転車の利用シーンにこだわる姿勢がブリヂストンサイクルの強さではないだろうか。

【関連記事】
なぜ、雑誌Martに取り上げられる商品はヒットするのか
あきらめない!規制にも踏み込む -電動アシスト自転車「高価格でも売れる理由」【1】
なぜ不況でも10万円の靴が売れるのか
「マルちゃん鍋用ラーメン」が突然売れ出した理由
ルイ・ヴィトンと無印とカレーの共通点