発売当初のテレビCMはたとえば「水戸黄門」の枠。体力のない人が主な顧客だった。いまでは、子育てママの「新・三種の神器」ともいわれるほどに。「人・社会・企業」に優しい商品はどのように生まれたのか。

2年前にバイクを超えた

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電動アシスト自転車市場規模推移/二輪車市場規模推移

秋晴れの都内で駅から会社に向かっていると、颯爽と自転車で自分を追い越していくビジネスマンによく出会う。前々から不思議に感じていたのだが、今回の取材でナゾが解けた。普通の自転車ではなく「電動アシスト自転車」だったのである。よく見ると大人から子供まで、多くの人がこの「ちょっと違った自転車」に乗っている。

この電動アシスト自転車、不況といわれる国内において発売以来、順調に市場が拡大しているヒット商品だ。国内販売台数は40万台を突破し、2011年には二輪車の販売台数を上回った。高額商品ということもあって、町の自転車屋やバイク屋にとっては救世主といえる商品でもある。

近くのサイクルショップに行き、試乗をしてみた。こぎ始めた瞬間すぐに、後ろから背中をグイっと押されるような感じがする。坂道が完全に坂道でなくなる。「一度乗ると手放せず、いまは2台目需要もある」(GFKライフスタイルトラッキングジャパン・金子昇氏)というのがよくわかった。

初代電動アシスト自転車の発売から20年。ゼロだった市場をどのように広げていったのか。マーケティング理論に基づき、4つの視点から見ていこう。