笠松具晃(東京学芸大学ラグビー部監督)

かさまつ・ともあき●長崎県出身。神奈川県立相模原高校を経て東京学芸大学に進学し、ラグビー部で活躍。1989年に同大卒業後、小学校の教諭となる。2008年に母校・東京学芸大学のラグビー部監督に就任。好きな言葉は「臨機応変」。監督ブログのURLは、
http://www.u-gakugeirugby.com/blog_my_top/blog_id=1

寒風吹きすさぶ名古屋・瑞穂ラグビー場で、大きなからだが宙に舞った。歓喜の胴上げである。2度、3度……。その東京学芸大ラグビー部の笠松具晃監督が顔をくしゃくしゃにする。

「恥ずかしいけど、今日だけは、自分から(胴上げで)“上げてくれ”と言いました。はっはっは、感無量です。よくぞ、優勝したなという感じですね」

1月6日、「もうひとつの大学選手権」といわれる全国地区対抗大学ラグビー決勝で、東京学芸大が日本文理大を21-12で下し、とうとう初優勝を遂げた。全国の進学高校から集まってきた部員がわずか31人(うち女子部員が3人)。カネも環境も乏しいけれど、創部42年目の国立大学が知恵と工夫と努力で頂点に立った。

48歳の笠松監督は、東京生まれの長崎育ち。高校時代にラグビーに魅了され、東京学芸大ではフランカーとして暴れ回った。卒業後は小学校の教諭となり、赴任地の佐世保市などでタグラグビー(タックルのないラグビー)の指導などを始めた。現在は、東京学芸大附属小金井小学校の教諭を勤める。2008年から学芸大ラグビー部の監督となり、学生を信じ、考え、コツコツと鍛えてきた。

ラグビーに限らず、スポーツは自由だ。だから、「創造」を大事にする。教えられたことを、教えられた局面で、教えられた通りにするだけなんて、まったくつまらない。

「つまらん!」。練習でも、ありきたりのプレーにはダメ出しをする。

「攻撃の練習でも、“おまえらの攻めはすぐわかるからつまらん”って。エッと驚くような、もっとオモシロいことをやってほしいのです」

タグラグビーでも、ラグビーでも、子ども主体のチーム作りを目指してきた。最初の頃は、自分の指示通りにやらせようとして、「失敗ばかりだった」と振り返る。が、いまは違う。学生主体。指導のモットーが、「学生と共に創っていく」である。

「結局、ゲームをやるのは学生ですから。試合の中で学生たちが修正していけるチカラというのを身につけてほしいのです。そのためには、練習メニューも自分たちで考えないといけません」

学芸大の学生は多くが、将来、教職の道に就く。教える立場になっても、考えるチカラ、これはマストである。教室でも、グラウンドでも、学びは絶えない。

妻との間に4人の子どもがいる。家族は佐世保に住み、もっか東京に単身赴任中である。ラグビーを愛し、その真剣勝負の真ん中で学生に人生の基本を教えてきた。

これで好スタンドオフの川村航ら主力が卒業する。チームは変化を続ける。

「うちは安定して部員が入ってくるわけじゃない。部員に合った目標を立てて、部員と一緒にやっていくのがうちのスタンスです。歴史はつくっちゃったけど、このあとが大変ですね。はっはっは」

苦労を喜びにする。人間作りのチャレンジが続く。そう言いながら、笠松監督は愉快そうに笑うのだった。