なぜ優良企業でもコア人材としての認識がもてないか

逆に、多くの企業が、法律に規制されて、無理やり今までのやり方をとってきたというのであれば、法律を変えれば、一気に変化は起こるだろう。解雇規制緩和論者が求めている雇用の流動化も起こるだろう。だが、実態はそうではないのである。

また、正社員の無定義とそれにともなう雇用管理の多様性には、対極もある。「周辺的正社員」と呼ばれる正社員の存在である。「周辺的正社員」にも明確な定義があるわけではないのだが、いろいろな議論を総合すると、一応、雇用期間の定めのない正社員ではあるのだが、昇給や賞与などがなく、処遇全般も非正規雇用とほぼ同じというグループ、ということらしい。

誤解を恐れずにまとめるとすれば、法律的に規定された雇用保障以外の労働条件は、非正規社員とほぼ同じである正社員ということになる。「名ばかり正社員」と呼ばれることもある。

こうした働き方をしている正社員にとって、雇用保障というのは、ある意味で恐ろしい労働条件なのである。多くの正社員が、安定という希望をともなう雇用契約を得られるのだから、かなり劣悪な労働条件でも受け入れてしまう。だが、極端に言えば、多少劣悪な環境でも、正社員になれるのであれば、という気持ちが起こってしまうのである。そのため、雇う企業が労働者を人として扱うつもりのない、いわゆる「ブラック企業」の場合、雇用保障はある意味では、劣悪な労働条件で人を使う一種の免罪符のようになってしまうのである。そして、肝心の雇用保障も、雇用主の意向で簡単に覆されることもある。さらに、雇用契約を打ち切るにあたっては、マスコミ報道などが正しいとすれば、「追い出し部屋」などと呼ばれる、問題のある方法がとられるのである。実際、周辺的正社員と呼ばれる人たちがどのぐらいの割合存在するのかについては、明確な定義のない対象なのでわからないが、一部には、25%前後という推定もある。ただ、いろいろな話を総合すると、増加傾向にあるようである。