遺族の財産争いを避けるために「遺言を書くべき」とは、よくいわれる。しかし、実際に書いている人は、まだ少ない。書いていたとしても、形式が整っておらず無効になってしまうケースも少なくない。また、親の思いが遺言でうまく伝わらず、かえって遺族がもめてしまうこともある。

これから財産を受け継ぐ子どもの立場からすれば、親に「もめない遺言」をいかに書いてもらうかが重要になってくる。

もめる遺言の典型は遺留分の侵害

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遺言で何ができる?

では、「もめない遺言」とは、どんなものか、実際に見てみよう。

まず、遺言によって何ができるのかを確認する。簡単にいえば、相続人の「誰に」「何を」相続させるのか、親の意思で決められるということだ。たとえば、「自宅の土地と建物は、同居している長男に残す」「大切な宝石は長女に持っていてほしい」など、自分の財産をどのように分けるか、決めることが可能になる。

最後まで親の面倒を見てくれた次男に長男より多くの財産を残したいなど、相続分を多く指定することもできる。それ以外にも、表のように、遺産分割において親の意思を反映させることができるのが遺言ということになる。

遺言がなければ、相続人全員で遺産分割協議を行わなければならない。相続財産がどこに、どの程度あるのか、はっきりわからない場合もあるだろうし、相続人の数さえ、何人なのかわからないこともある。それらをひとつひとつ解決していくのは、相続人にとって大きな負担だ。時間と労力の無駄を省く意味でも遺言は有効。遺言があれば、遺産分割協議をせずに遺産分割が可能になる。

しかし遺言によって、逆に相続人がもめてしまうこともある。典型的なのは、遺留分を侵害する遺言を書いてしまったケース。

遺留分とは、遺言でも侵すことのできない最低保証の相続分だ。遺言を書くときには、少なくとも遺留分を侵さないようにする必要がある。

また、遺言には主に3種類の方式がある。それぞれにメリット・デメリットがあるので、作成する前に十分検討したい。せっかく書いた遺言が無駄にならないように、形式要件に気をつけたい。

「親に遺言を書いてほしいなどとは頼めない」という人も多いだろう。正月やお盆など家族が集まったときに、それとなく話題にしてみてはどうか。