「ネット販売によって、ドラッグの実店舗の売り上げが多少食われても、健康市場にはまだ金脈が眠っている。それを掘り出す業態として、ドラッグストアは非常に有望なのです」

国の医療保険制度は、破たん寸前といわれる。10年度の国民の医療費は37兆円に達し、4年連続で過去最高を更新。「スイッチOTC」と呼ぶ、医療用医薬品から一般用医薬品にシフトしないと、国の財源が持たない。健康を自己管理する、セルフメディケーションとともに、ドラッグ業界には追い風が吹く。

「施設に入れない、待機児童ならぬ待機老人も増えています。『在宅』になればなるほど、病気にならない、元気でいられる食事をどう摂取するかは、医薬品と並んで大切。それを専門家として説明販売ができる業態は、ドラッグストアしかありません」(宗像さん)

たとえば医薬品を薬剤師が担い、健康食品を含めた食品を登録販売者が担当。心身の健康にも影響する化粧品をビューティアドバイザーが担うというように、ドラッグストアには、専門性を持つプロがいる。販売の大半をパートやアルバイトが担うコンビニ、スーパーとはそこが決定的に違う。

厳しい競争に打ち勝って成長してきた各武将は、さらなる拡大路線を描く。

「16年3月期に、グループ店舗数2000店、業界シェア10%の実現」と、身近な数字を掲げる武将(松本会長)もいれば、壮大な夢を語る武将も。

「将来は『世界に2万店、売上高6兆円をめざす』。まだ50店だった時代に『将来は1000店突破』と20倍構想を唱え、周囲に笑われたが実際に実現させた。1000店の20倍の2万店も実現可能だ」(ツルハHD・鶴羽樹社長)

今後は各地に数多く残る、個人経営の薬局が淘汰されて、大手の草刈り場になると予想する声もある。

「織田がつき、羽柴がこねし天下餅……」ではないが、7大名を中心にこねている「健康市場」という名の天下餅――。これを最後に食うのはどこか。今日も各地で“局地戦”が繰り広げられている。

(小野達多志、川本聖哉、田辺慎司、永井浩、山口典利=撮影)
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