西村康稔 内閣府副大臣

農水産業に大きな打撃を与える可能性があるのに、なぜTPPに参加しようとするのか、そのメリットはどこにあるのか、とよく聞かれる。

まず、関税撤廃については、やはり、韓国が先行してFTAを結んだ米国の市場における競争の観点が大きい。乗用車やトラック、ベアリングなど、韓国と競合する工業品の価格競争力向上である。

為替が5円でも8円でも動けば10%近く価格は下がるから、為替の影響の方が大きいとの指摘がある。しかし、わずかな金額の差で韓国の製品と熾烈な競争を行っているのであって、為替水準が大きな影響を与えるのはその通りだが、数パーセントの関税の差も大きな影響を与えてしまうのも事実である。

また、例えば、政府調達の分野について述べれば、WTOの政府調達協定に加盟している国は、TPP協定交渉参加国12カ国中、日本、米国、カナダ及びシンガポールの4カ国のみである。政府調達分野は、日本は世界トップクラスに開放されている国であり、政府調達分野は日本にとって攻めの分野である。

TPP協定交渉により、残り8カ国を中心に何らかの形で市場開放が実現すれば、我が国の企業にとっても参入の機会が増え、日本企業が海外で公共工事等を受注しやすくなることが期待される。

さらに、知的財産保護もTPP交渉の射程となっているが、知的財産保護のルールが整備されることで、世界的に評価の高い日本のアニメ・ゲームなどのコンテンツや、長年の努力で築きあげてきたブランド・商標などを守ることができる。

このように、TPPは、日本にとって、アジア太平洋地域で経済展開をしていく上で、ルールの面ではプラス面が多く、我が国の経済成長や生活の豊かさの実現に資するものである。TPP交渉は21の分野で行われているが、多くの分野で日本として攻めるべき事柄が多く、国益を最大化すべく交渉を加速させている。

西村康稔(にしむら・やすとし)
昭和37年、兵庫県明石市出身、神戸大学附属明石中学校、灘高、東京大学法学部卒業。通産省入省後、アメリカ・メリーランド大学院で国際政治学を学び卒業。平成11年通産省調査官を退官後、平成15年衆議院議員総選挙において初当選。20年外務大臣政務官。同年9月、47歳で自民党総裁選に立候補。以降、党改革実行本部副本部長、党政調副会長、党影の内閣 経済産業大臣、財務大臣等を歴任。24年内閣府副大臣に就任。著書に『新(ネオ)・ハイブリッド国家 日本への活路―3つの空洞化を越えて』(スターツ出版)、『生き残る企業・都市』(同文書院)、『リスクを取る人・取らない人』(PHP研究所)、『国家の生命線』(共著・PHP研究所)などがある。