仲介依頼しても5年間音沙汰なし

いざ実家を売ろうとなったら、地方の大都市や中都市なら街の不動産業者に委託しましょう。ここでいう中都市というのは、人口でいえば10万人程度、地域内を幹線道路が通っていて、大型商業施設があるところ。こうした立地なら、不動産仲介がビジネスとして成り立つからです。

しかし、過疎地になりますと、なかなかそうはいきません。ただそうした場合でも、認定NPO法人ふるさと回帰支援センターのようなところが相談に乗ってくれます。また、実家がある場所の地区長さんに直接お願いして買い手を探してもらうことも忘れないでおきましょう。

さらに、最近注目されているのが「空き家バンク」の利用です。自治体などが地元の空き家を賃貸・売却物件としてインターネット上などで紹介し、全国からの移住促進を行う事業を行っています。約400カ所の市町村が実施しており、ここに登録しておくのもいいでしょう。

よりスムーズに売却したいと思うなら、リフォームあるいは水回りを改修して、付加価値を高めておくのも一手。田舎暮らし希望者に人気のある古民家の場合、家屋の価格が500万円、手を加える費用が500万円、合わせて1000万円前後の物件が動くと言われています。

ただし、そう簡単には売れないと覚悟しておくべきです。たとえば、東日本では都心に近い山梨県や長野県、温暖な千葉県、静岡県など人気のエリアもありますが、それでもほとんど即売とはいきません。

私の知り合いの長野県の例ですが、不動産業者に仲介を依頼しても5年間は音沙汰なし。その後、空き家バンクに登録して、売れるまでに2年かかりました。ですから、売却を決意したのなら、1日でも早くアクションを起こすことが大切です。

どうしても売れないというときには、Uターンも選択肢の一つに入れてはいかがでしょうか。せっかく田舎の両親が守ってきた家屋敷です。決意をすれば、仕事は地方でも見つけることはできます。あるいはリタイア後、田舎での第二の人生を視野に入れみてはどうでしょうか。

相続ジャーナリスト
三星雅人

1959年、東京都生まれ。「マネージャパン」副編集長などを経て独立。著書に『田舎の家のたたみ方』がある。
(構成=岡村繁雄 撮影=相澤邦廣)
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