「緊急中毒」に陥ってしまう理由

第3領域は“合理性を失った組織活動の隠れ家”でもある。実際には不要な報告書、形骸化したミーティングなど、「前からやっている」といった理由だけで行われている活動がここに潜んでいる。

第3領域で得られるリターンは、費やした時間とエネルギーを常に下回る。それなのに第3領域の活動ばかりしてしまうのは、自分自身が何が重要か判断できなくなっているか、組織が本当に重要なことを明確にしていないからである。だからこそ緊急性に翻弄されてしまうのだ。

第1領域と第3領域は「緊急」の領域であり、これらの活動にばかり関わると緊急中毒に陥る危険性も高い。余裕がなくイライラするなど、精神的にも悪影響を受けやすくなる。

右下の「第4領域」に入るのは「緊急でも重要でもない」活動である。だらだらとテレビ番組を見たり、ゲームをしたり、ネットサーフィンをしたり。適度に楽しむ分には気分転換になるが、それが仕事からの逃避だったり熱中しすぎて依存してしまったりすると大きな問題になる。第4領域では生産的な活動がまったく行われないため「無駄」の領域と呼ばれる。ここに大切な時間とエネルギーを費やしても、リターンはゼロである。

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図2 本当に大切な活動(第2領域)を見きわめる

一方、右上の「第2領域」に入るのは、「緊急ではないが重要」な活動である。影響力の大きい目標とその計画を練って実行する、人脈を構築する、学習に取り組んで自分の実力を向上させる、といったことがこの領域に入る(図2の問いに答えてみるのもヒントになる)。

第2領域は「卓越した生産性」の領域である。ここで得られるリターンは、常に費やした時間とエネルギーを上回る。

第2領域に注力すれば、第1領域の「緊急、かつ重要」な活動を減らすこともできる。トラブルの発生を予防するような仕事に力を入れれば、緊急事態で振り回されることも少なくなる。

クレームのスピード処理に力を入れ平均2時間で解決するが毎月100件のクレームが発生しているA社と、A社ほどクレーム処理のスピードは速くはないが故障やトラブルの予防に力を入れ、毎月1件のクレームしか発生しないB社。果たしてどちらが生産的で顧客からの評判も高いか、答えは言うまでもない。