もし、そうなったとすると、国民所得に占める租税負担と社会保障負担の割合を示した国民負担率も一気に上昇していく。鈴木さんの推計によると11年度に38.8%だった国民負担率は、25年に52.1%となり、50年には71.3%にまで達する。「収入の7割強を税金や社会保険料にとられてしまったら、国民の生活はさながら“生き地獄”のような状況に陥るでしょう」という鈴木さんの話に、あなたは耳を塞いでしまうのだろうか。

年金・医療や雇用の問題に詳しいみずほ総合研究所上席主任研究員の堀江奈保子さんも「主要先進国の年金の支給開始年齢は、米国が27年までに67歳へ、ドイツが29年までに同じく67歳へ、さらに英国が46年までに68歳への引き上げを決めています。税金や保険料を負担する現役世代の負担増を考えると、日本においても支給開始年齢の引き上げはやむをえないでしょう」という。

こうしたなか、持続可能な社会保障システムを構築しながら、今後30年間、日本経済がどう変わっていくのかを展望したのが大和総研だ。レポートの取りまとめの中心メンバーを務めた鈴木準主席研究員が、改革シナリオの概要について教えてくれた。

「65歳の年金の支給開始年齢の引き上げを20年度に前倒しし、31年度からは69歳支給にする一方で、70歳以上の医療費の自己負担割合を17年度から2割に引き上げます。そして、30年代初頭に消費税が20%になることを前提にシミュレーションしたのですが、それでもプライマリー・バランスの対GDP比はマイナスでした。そこで、マクロ経済スライドの強化を行い、現役世代の手取り収入に対する公的年金の支給水準を政府公約の5割から4割へ引き下げることや、私的年金の整備・活用なども追加した厳しい『超改革シナリオ』を想定しました」

その結果、プライマリー・バランスの対GDP比はようやく30年代に入ってからプラスに転じる見通しとなった。しかし、オーソドックスに予測した「ベースシナリオ」の実質GDPの平均成長率が、10年代=1.5%、20年代=1.5%、30年代=1.0%であったのに対して、超改革シナリオをとった場合には、おのおの0.3%、0.1%、0.1%ずつ押し下げ要因に働くという。