――近年、若い人たちが海外留学や海外勤務にいきたがらない傾向が問題になりました。これは、いかがですか。

【宮内】本や映像、音楽など、目や耳から吸収できるものもありますが、肌で感じるということが重要です。もし、若い人たちが外の世界をみにいかなくなれば、日本は衰退していきます。

でも、そんな「内向き志向」が若者たちを覆い続けてしまうとは思いません。先日、米国へいった際に、シアトルでかつて自分が学んだワシントン大学の大学院に呼ばれ、「グローバル・エグゼクティブ・コース」のサマースクールで話をしました。16人いた学生は全員、外国からの留学生で、話の後に質問攻めに遭いました。その16人のなかに、日本人の男性が5人いました。聞くと、みんな日本の企業から派遣されていました。韓国人が6人、中国人やパキスタン人もいて、アジアの台頭を実感しましたが、日本人も5人いて、暑い中で一生懸命に勉強しているので、「おお、これは捨てたものではない」と思いましたね。

――「マクロの世界」をみる力をつけたとして、新たなビジネスチャンスをみつけ出すには、次に何が必要ですか?

【宮内】オリックスの創業時に社長を務めた乾恒雄さんの教えに「金平糖(こんぺいとう)のように触覚を出せ」というのがありました。いまの若い人には「金平糖」と言ってもわからないかもしれませんが、球形の表面に多数の突起がある砂糖菓子です。この突起が、いわば触覚で、社員の1人ひとりが多角的で高感度の触覚を持てば、様々ないい情報が入り、新しいビジネスにつながるという意味です。

いまの時代、情報過多です。役にも立たない、むしろ害にすらなる情報があふれています。そのなかから有益なものを選び出すのが、触覚の機能です。選び出す力を持つためにも、やはり、絶え間ない勉強が必要です。これは、若い人たちだけでなく、経営者にも言えます。

――でも、インターネットの普及で世界中、情報があふれかえっています。選び出すのは、至難の業ではありませんか。

【宮内】ネットでいくらでも集まるようなパンフレット型の情報など、思い切って全部、捨ててしまうことも必要です。そんな情報に引きずられていたら、画一的な思考に陥り、独自性のあるビジネスなど考え出せません。それに、あるレベル以上の力がある人々は、そういう情報や機械的な収集方法に、いずれ飽きてくる気がします。