自然の恵みを利用するための知恵とは

第2の理由は、スマートコミュニティにおいては高齢者の出番が多く、そのことは、震災復興を通じて「高齢者がイキイキと働くまち」をめざす釜石市の方針と合致するからである。この点について、「釜石市スマートコミュニティ基本計画」は、以下のように述べている。

「釜石市は、震災以前から高齢化率が全国平均を上回り、人口減少にも歯止めがかからないなど、今まさに釜石市の未来を占ううえで重要な転換点を迎えています。

また、度重なる自然災害を乗り越え、鉄と魚のまちとして全国に先駆けて発展してきたこのまちの人々は、変革を恐れないチャレンジ精神と聡明さをあわせ持ち、それは高齢者になっても決して衰えるものではありません。高齢者がイキイキと『働く』ことができることこそが、釜石市におけるスマートコミュニティ実現の大きな原動力となり得るのです。

スマートコミュニティの構築は、地域に根付いたさまざまな産業を生み出すきっかけとなり、そこから生まれる雇用には、多くの知識と経験を有する高齢者だからこそできるものも多く含まれます。例えば、小水力発電や木質バイオマスボイラーなどは、簡単なメンテナンス作業がほぼ毎日発生します。このような作業は、子育てを終え、生活の自由度が比較的高い高齢者だからこそできる就業形態です。また、再生可能エネルギーの利用とは、自然の恵みを利用することであり、そこに長く住み、地域の特性をよく知っている高齢者の知恵や経験を活かせる可能性も広がります。このように、年をとってもイキイキと暮らせるまちは、若い世代の不安を和らげることにもつながります」

スマートコミュニティの構築は、釜石市の復興プランの大きな特徴である「高齢者がイキイキと働くまち」という方針と整合的である。ただし、このことは、スマートコミュニティにおいて若い世代の出番がないということを、決して意味しない。むしろ、情報通信技術を駆使するスマートコミュニティには、若者の出番が大いにある。スマートコミュニティは、老若を問わず幅広い世代の積極的な参画があってはじめて、きちんと機能するのである。