カジノ産業の経済効果は大きく、比較的産業の裾野が広いと言われています。カジノを中核とした観光事業で海外からの観光客を呼び込むビジットジャパン構想はもちろん、エンターテイメントにおいてはリアルなイベントからデジタル分野までカバー。さらに周辺の不動産投資を呼び込み、定住型エンターテイメントの構想まで出てくれば、交通機関が貧弱なために「陸の孤島」と揶揄されるお台場周辺の住環境も劇的に改善される可能性を秘めています。カジノ構想に続き、東京五輪2020が実現すれば、不動産市場での評価も見直されることになりましょう。実際に『お台場カジノ』を当て込んで、FMHの株価や周辺の地価も期待感で値上がりするという“フライング”も発生しているぐらいです。

ただし、この『お台場カジノ』の実現具合というのは、石原家および猪瀬都知事の醜聞という政治レベルの問題もさることながら、高いとされる経済効果予想に対する疑問や、カジノの健全性に対する懸念といった「そもそも論」に帰する内容が多いのは気がかりです。というのも、日本には約20兆円のパチンコ市場があり、海外からは最初から「カジノ王国」に見えている現実があります。

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「ギャンブル市場」の国内規模

実際、日本全国津々浦々に開店しているパチンコ・パチスロは海外から見ればどうみてもカジノそのものであります。しかも実際に客に物品を引き取らせ、それを店舗が買い戻すという古物商の営業免許を使った三店方式なる迂回手段を使っており、しかもパチンコ・パチスロを実質的に取り扱っている法律は風俗営業法です。なんですかこれは。海外からはほとんど理解不能な日本社会が抱えるミステリーのひとつと言えましょう。

一連の日本のカジノ振興においては、超党派のカジノ議連や業界大手の密接な情報交換の先に成り立っていて、ある種の「癒着」が取り沙汰されているのも特徴のひとつです。日本のパチンコ市場は縮小が続いており(※2)、滞在型カジノのような大型投資を呼び込まなければ、産業としてこれ以上の維持、成長が望めないという後ろ向きな事情も垣間見えます。これは「カジノで来る客と、国内パチンコ・パチスロの客は層として別」という認識に立っているからですが、それは巨大なカジノ投資を回していくために、新たに相当な富裕層を海外から呼び込む必要があることも意味します。