人サマに「倒れても安全な石油ストーブ」を売りつけ、「スイッチを止め忘れても、高温になると自動的に止まる電器ストーブ」をヤッキになって宣伝している企業が、こともあろうに自社員にむかってその器具そのものの使用を「火災上の理由」から固く禁じているのであった。ブラックユーモアと笑ってすませるうちはよい。こんな流儀がトップクラスの会社で堂々とまかり通っていること自体、問題だとは思わない不思議な人種も、いるものだ。企業の窓を通して社会を覗(のぞ)いている人種には、それも道理かもしれない。もしそれが不思議と気づいても、「ひょっとして不思議に思う自分の精神のほうがおかしいのかも」という気分に駆られるから妙なものだ、といった類(たぐ)いの話なら、どこの企業にも一つや二つは必ずある。そんなわけで、私は以後、この流儀を「悪魔のサイクル」と秘(ひそ)かに呼ぶことにした。