私が四十数年前にMIT(マサチューセッツ工科大学)に学んでいた頃、ノーマン・C・ラスムッセンという教授がおられた。原子炉の安全を論じるとき、その「ラスムッセン・リポート」を抜きにして語ることはできない。どういうものかというと、確率論である。

われわれが原子炉を新たに設けたいとき、住民の説明会に行くとする。そこで必ず訊かれるのが「絶対安全か」という質問だ。科学に絶対はないから、本当は「いやいや、絶対ということはありません」と言いたいところだが、それでは住民は納得しない。そこで、これを乗り越えるために確率論を導入したのがラスムッセン教授なのだ。

たとえば、地球上に隕石が落下してきてあなたが打たれる確率は僅かこれこれであり、原発の事故が起こる確率はそれと同じである、つまりリスクは地球に住むすべての人に同等なのですよ、と。こういう考え方なのである。