2013年12月6日(金)

ゴボウ――地味な存在だが江戸時代から愛されてきた頑固一徹な野菜

dancyu 2011年12月号

福地享子=文
【つくり方】
ゴボウを斜め薄切りに、タマネギも薄切りに。胡麻油でゴボウ、タマネギ、牛こまを炒め合わせ、砂糖と醤油ですき焼き風に調味する。牛こまは味だし程度でよし。タマネギの甘味がからみついたゴボウの味が、この料理のポイント。針唐辛子をのせて出来上がり。

ゴボウ嫌いに、出会ったことがない。

きんぴらだろ。豚汁にはぜったいゴボウ。かき揚げもゴボウに限る、と男たち。

女ともだちの間では、ゴボウチップスが便秘薬より効くとかで、密かなブーム。築地で業務用のゴボウチップスはないかとマミチャン。トンチンカンな買い物だと思うけど、見つかったのかしら。

こんなに好かれているゴボウ。でもスーパーでの売り場面積は小さく、探すのにひと苦労。特売の目玉商品になることもない。でも、必ずある。泥つきと洗いゴボウの揃い踏みで。惣菜売り場では、次々に新しいおかずが登場するが、きんぴらゴボウは不動。地味につつましく、でもその存在を絶やすことはない。

そんなゴボウを、私は頑固一徹クンと呼びたい。

いつだってあるのは、地道な努力で出荷調整しているからだ。青森県が、圧倒的な生産量を誇るが、シーズンは9月から翌年5月まで。2位につける茨城県がその後を受け、6月下旬から8月いっぱい。さらに群馬県などの関東勢、宮崎県などの九州勢が時期をたがえて奮闘と、健気に力を合わせ、出荷しているのだ。

料理として、きんぴらが定番というのも頑固一徹クンにふさわしい。なにしろ江戸時代からのおかずですからね。きんぴらの語源は、江戸時代に流行った浄瑠璃中のヒーロー。漢字で書けば「金平」。あの金太郎の息子とやらだ。熊にまたがり、まさかり担いだ姿が永遠像の金太郎の結婚生活なんてイメージできないが、ともかく息子の金平も親譲りの豪傑。料理のきんぴらは、固くて辛い。精のつく野菜ともいわれ、強さを感じさせる。そこでかのヒーローにたとえたんですね。以来、細く長く愛されてほぼ200年! こんなおかず、稀じゃないかしら。

こうしてきんぴらが歴史的定番おかずとなった背景には、しょうゆと油っけ、という味つけに恵まれたから、と思う。かき揚げには天つゆが欠かせないし、サラダにしてもマヨネーズにしょうゆ少々を足すと、味が引き締まる。

ゴボウの原産地と見なされる植物は、ヨーロッパから中国まで広く分布しているというが、どこの国でも野菜には昇格していない。日本は原産地でないにもかかわらず、野生種を食用に改良、普及させた。その違いは、おそらく調味料に関係したのではないか。しょうゆと油っけがあるなしという違いに。だからこそ、日本でしぶとく生き続けてきた。

ちなみに私の好きなゴボウ料理は、牛こまとタマネギ少々と炒り煮したもの。名前はなし。母の味をまね、今にいたるまで作り続けている。付和雷同型の私としては、頑固といえばこのぐらいです。

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福地 享子

かつて女性誌の編集者、その後、築地の鮮魚仲卸「濱長」の看板ネエサンとして大活躍。現在は築地の書庫「銀鱗文庫」役員。ここを拠点に、築地を走り回っている。