【田原】チームラボの猪子寿之さんと対談したら(http://president.jp/articles/-/11132)、猪子さんは、「マネジメント能力なんて一切いらない」といった。チームラボは、お客から打診があるたびにプロジェクトチームをつくってメンバーを集めます。プロジェクトにはマネジメントをするリーダーがいるけど、固定されておらず、プロジェクトが終わるとまた一社員に戻る。そういうプロジェクトが100くらいあるらしい。

【古市】でも、能力がない人はどうしたらいいんでしょうか。能力がある人は猪子さん的な仕組みで働いていけるかもしれません。でも、実際は能力のある人ばかりじゃないですよね。日本の会社は、能力のない人でもそこにいれば仕事を与えられて定年まで勤められるという社会福祉的な要素を持っていました。でもみんな猪子さんの会社のようになれば、あぶれる人が出てくる。

【田原】パレートの法則といって、どの企業でも20%の人間が売り上げの80%を稼いでいるという法則があります。今までは大企業も余裕があったから、それでやってこられた。でも、今や大企業にそんな余裕はない。

【古市】企業は海外に日本人村をつくって、そこに人を送り込むことで解決を図ろうとするんじゃないでしょうか。たとえばインドネシアだったらインドネシアの最低賃金でいいので、日本人を日本で働かせるより安く済む。実際、最近はコールセンターを中国の大連など海外に移す企業が増えています。ネット環境があれば場所は問わない仕事ではもちろん、自動車産業などもそうなっていく可能性があります。

【田原】今、104の番号案内は、沖縄ですよね。沖縄も給料は低いけど、これからは104にかけると、沖縄じゃなくて大連やインドネシアにかかる可能性もあるわけか。

【古市】ネットは人を自由にしますが、自由になれば格差も広がります。上のほうの人はどんどん上までいけるけど、下の人は今よりもっと落ちるという世界になる。たとえばコールセンターのように誰でもできるとみなされている仕事は、場所がインドネシアに移って、日本語ができるインドネシア人と競うことになるかもしれない。そうなれば、給料の水準はどんどん下がりますよね。

津田大介
1973年、東京都生まれ。早稲田大学社会科学部卒。学生時代からIT関連のライターとして活躍。99年有限会社ネオローグを設立し、代表取締役。メディア、大学で幅広い活動を展開中。
古市憲寿
1985年、東京都生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒。現在、東京大学大学院総合文化研究科博士課程に在籍中。大学在学中に、ノルウェーのオスロ大学に交換留学で学んだこともある。
田原総一朗
1934年、滋賀県生まれ。早稲田大学文学部卒業後、岩波映画製作所、テレビ東京を経てフリーに。活字と放送の両メディアで評論活動を続けている。『塀の上を走れ』『人を惹きつける新しいリーダーの条件』など著書多数。
(村上 敬=構成 宇佐美雅浩=撮影)
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