上司の仕事をサポートしていくためには、何よりも観察が必要です。行動や発言、表情など、上司を見てわかることもありますが、上司周辺の「物」からヒントが得られるケースもあります。意外かもしれませんが、「ゴミ」が上司を理解するために役立つのです。

実は私も、宗次徳二の秘書になった頃、社長室のゴミ箱をチェックしました。私が注目したのは、捨てられたDMや資料などです。それらは、上司に「いらない」と判断されたもの。すなわち、興味・関心がないものだということがわかるのです。まずはそれらをすべて記録しておきます。常に開封せず捨てられているものに関しては事前にふるいにかけ、興味がありそうなものだけを渡すようにしました。社長ともなると、郵便物の数も膨大なので、今必要な情報に絞り込むのもひと手間です。秘書がそれを行うことができれば、上司は貴重な時間を有効に使うことができるでしょう。

また、お取引のない企業から「面談をお願いしたい」という申し入れがあった場合、いつも上司が捨てているDMに関連する企業であれば、「たぶん会わないだろうな」と判断できます。そうすれば、はじめから相手に期待を抱かせない対応をしておき、上司に確認してから「投資には興味がないようで、どちらからお話をいただいてもお断りしているんです」などと、相手を不快にさせない断り方ができるでしょう。

ただし、「いつも捨てているから」と自分だけの判断で処分することがあってはいけません。捨てていいのは、「投資には興味がないから、全部捨ててしまっていいよ」などと言われた「絶対に不要」なものだけ。少しでも自信がなければ、そのつど上司に確認し、「これは必要」「これは不要」という情報を蓄積していきます。また、興味がないのに勝手に送られてきてしまう高価そうなカタログなどがあれば、「受取拒否」としてそのままご返送したり、送付をストップしてもらえるよう連絡したりすることも必要でしょう。

また、上司は興味がなくても、社内の別の部門にとっては有益な情報かもしれないと感じた資料があれば、「○○部にお渡ししておきましょうか?」と提案してもいいかもしれません。そうするためには、上司にとって必要のないものであっても、いちおうは目を通し、内容を確認するという作業が必要になります。機械的に宛名を見て、「必要ない」と捨てていくだけでは、そこまでの気配りに到達できません。とはいえ、「あくまで仕分け」というスタンスを忘れてはいけません。まるで自分が「会社にとって有益な情報に気づかなかった」と言われているように感じて、気分を害する上司もいるからです。

上司を理解して動くためには、上司にとって不要なものを知ることも必要です。重要度や優先順位をはかるために、上司の身の回りの「物」や「ゴミ」にも注意する視点を持ちましょう。

日本一のプロ秘書が教える「一流のおシゴト」
捨てられた資料やDMから上司の関心がわかる

カレーハウスCoCo壱番屋(株式会社壱番屋)創業者(宗次夫妻)秘書
中村由美

コンサルタント会社の社長秘書を経た後、当時まだ100店舗の中堅企業だった株式会社壱番屋に入社。秘書の経験を買われ、社長秘書に任命される。急成長の壱番屋において創業者・宗次徳二氏をはじめ、3代の社長に仕え、トップの側で上場も経験する。中小企業の秘書実務と上場企業の秘書実務の両方を知る数少ない人物。日本秘書協会(元)理事、ベスト・セクレタリー、日本秘書クラブ東海支部(元)役員、秘書技能指導者認定、サービス接遇指導者認定。