文章を書くときは、はやる気持ちを抑え、「そもそも何が問題なのか」「何のための提案なのか」に立ち返り、読み手とミッションを共有することが重要だ。それがあって初めて「続きを読みたい」という気持ちになる。「うんうん、確かにそういう問題はあるよね。ぜひとも解決したい」と読み手が感じ、ミッションやゴールについて合意できてから、本丸である内容に踏み込んでいくべきだ。

このように相手の思考回路に沿いながら1つずつ合意を積み上げていけば、説得調で書かなくても自然と説得力は増していく。僕はこれを“頷きのカスケード(カスケード=階段状に水の落ちる滝)”と呼んでいる。

受け手が「そうだよね、そうだよね」と頷くたび、合意の連鎖が積みあがっていく。頷きのカスケードが築かれたらしめたものだ。読み手は傍観者から当事者に変わり、この提案内容を自分で選び取ったんだと感じ始める。書き手は自分の思うとおりに相手を動かすことができたといっていいだろう。

ジョブズを目指すべきなのか

一方、内容に自信がない人がやってしまいがちなのは、やたらと長い資料をつくることだ。「企画書はA4・1枚にまとめよう」とよく言われる。忙しい読み手を配慮してのことだが、余計な情報を入れすぎると、伝えたい内容が見えなくなる恐れもある。文章が長い人は、自分でも何が書きたいのかわかっていないのではないだろうか。僕の実感でも、内容に自信がない人ほど添付資料が多いという印象がある。

細かい話から書き始めるなと言ったが、細かい話は全体を通してもあまり入れないほうがいい。本人は時間をかけて考えた内容を相手に知ってほしい、細部の話こそ重要だと考えているのだろうが、企画書や提案書など、書かれたものに対する立ち位置は人によって異なるもの。別件でトラブルを抱えていて頭の中はそれでいっぱいという人もいるかもしれない。だらだら書かれた文章や、細かい資料を丁寧に読んでくれる奇特な人は少ないと考えるほうが無難だ。