原則[1]売り手側の固定観念にとらわれない

【鈴木】利益とは顧客の支持の証しであり、顧客のニーズに対し、価値あるものを提供することで得られるものです。その顧客のニーズは常に変化します。売り手は絶えず新しいものを提供し続けなければなりません。

新しいものを生み出すときに重要なのは、売り手側の固定観念にとらわれないことです。例えば、セブン&アイグループのプライベートブランド(PB)であるセブンプレミアムを始めたときのことです。コンビニでも、スーパーでも、百貨店でも業種を問わず、全グループで同じ価格で販売するという、かつてない試みを私が発案すると、グループ各社から反対の声があがりました。コンビニ側は、原則的にメーカー希望小売価格より値を下げて売るスーパーと、値を下げずに売るコンビニが同じ商品を同じ価格で置くわけにはいかないといい、スーパー側は反対に、コンビニと同じ価格の商品を扱うわけにはいかないといい、百貨店側は、スーパーやコンビニと同じ商品を扱うわけにはいかないといいました。そうした区分けは、売り手側が勝手に決めつけているだけです。

「顧客の立場」で考えるとどうなるか。顧客はセブンプレミアムについて、「この商品は200円を出して買う価値がある」と思えば、どの業種の店舗でも買います。「どこでも同じ値段だから買わない」などとは思いません。重要なのは、自分たちの固定観念を否定し、業種を問わず同じ値段で販売しても、顧客に価値を感じて買ってもらえる商品を開発していくことではないか、と説いて推進したのです。買い手の視点から売り手の固定観念を否定する。それが利益を生む基本の原則です。