プラチナの魅力は懐の深さにある

現在44歳。「銀座では10年頑張ると決めているから、あと7年は続けます。50代になったらカウンター形式の小さな店を、60代ではケータリングをやってみたい」。来年は飲食店のプロデュースやアドバイザーの仕事も控えている。トップシェフとなった今も衰えることのない意欲には感嘆する。

普段は美味しくて記憶に残るものを贈ることが多い原田氏も、パートナーとなればやはり特別な存在だ。「欲しがっていたらつい買ってしまう」というお人好しの性格も後押ししてか、有名ブランドの鞄や貴金属を贈ることも少なくない。貴金属の中でもとりわけ選ぶことが多いというのが、プラチナ・ジュエリーである。

「一見控えめなんだけど、よく見るとその輝きは本物。それに懐が深いというか、一番合わせやすいと思うんですよね。例えばプラチナのジュエリーを着けて、この服とは合わないな、となることはほとんどありません。ゴールドの場合はやっぱり服や色を選ぶような気がします。プラチナはほかの色とバッティングしないし、相性が悪い色はないですよね」

貴金属そのものの輝きだけでなく、洋服とのコーディネートまでを考慮する点が何とも原田氏らしい。上質素材にこだわり、全体のバランスを計算し尽くして仕上げられた氏の料理に通じるものがある。さらに、自身が貴金属を身に着ける場合も、プラチナ製品を選ぶことが多いという。

「僕は金属アレルギーがあるみたいで、ほかの貴金属は着けられないのですが、プラチナは大丈夫なんです。仕事中に指輪を濡らしたくないので、プラチナのチェーンに通して首から提げていたこともありました」

「アロマフレスカ」が意味する料理とは?

「アロマフレスカ」は、広尾でオープンしてから15年の歳月が経った今も客足が絶えない。かの『ミシュランガイド』では、2007年の東京版刊行時から現在まで1つ星を獲得。日本を代表するイタリアンとして、料理好きの間で知らない者はいないほどの名店へと成長した。その理由とはいったいなにか。そこにはイタリア料理である以上に、“原田流”であることというポリシーがある。

「僕は一皿の料理にあまり多くの要素を盛り込まないようにしています。一皿の構成は、だいたい3つくらいの要素でまとめる。例えば、Aという主材料があったとしたら、Aと相性のいい食材、それともうひとつの食材でまとめていくと味がぶれにくいんです。椅子とかテーブルも、4つ脚だとガタつくこともありますが、3つ脚だと固定されますよね。それと同じで3つの要素で構成するとバランスがいいのです」

そして、最も特徴的といえるのが、香りへのこだわりだ。

「店名のアロマフレスカとは、涼しげな香り、フレッシュな香りという意味。これをコンセプトに、特に香りを意識しています。そのため、素材の切り方や温め方、お客さまに供する際の温度にもこだわっている。フレンチやイタリアンなどの洋食で、美味しい料理をつくるシェフは大勢いますが、香りの立った料理をつくるシェフはあまりいないんですよ。そこが一番の違いかもしれませんね」

料理をサーブしたときに香りが届きやすいよう、テーブルを通常よりわずかに高めに設計したり、皿を2枚重ねて供したりと、氏の香りへのこだわりは細部にまでおよぶ。「お客さまにうまく届いているかは分からない」と冗談交じりに話すが、こうした小さな“原田流”の数々が、多くの食通をとりこにする理由だろう。