「素材探求」でも重要なパートナー

「職業柄もありますけど、人になにかを贈るときは、ものとして残るものよりも、やっぱり美味しく食べられて記憶に残るものを贈ることが多いですね。この時季にうまいものはこれ、というものがだいたい頭に入っています。例えば、私の父親の誕生日が3月の初めなのですが、毎年決まって贈っているのは毛ガニ。北海道に流氷が下りてきて、毛ガニが一番美味しくなる季節なんですよ」

いかにも料理人らしいギフト論を話してくれたのは、イタリアンの名店「アロマフレスカ」のオーナーシェフ、原田慎次氏だ。

イタリアンレストラン「アロマフレスカ」オーナーシェフ、原田慎次氏。1969年生まれ。88年より六本木「ヂーノ」にて修業を開始。94年、青山「ジリオーラ」シェフ。98年、かつての仕事仲間である田沢浩氏とともに広尾に「アロマフレスカ」をオープン。麻布への移転を経て、2010年、銀座に移転。サロン「サーラ・アマービレ」を併設する。

原田氏は1994年、弱冠24歳の時に、東京・青山の「ジリオーラ」でシェフデビュー。イタリアンの新鋭として脚光を浴びると、その4年後には独立して広尾に「アロマフレスカ」をオープンする。麻布に移転した後は、店内は常時満席状態、予約が取れない人気店としても話題となった。2010年には銀座に移転。天井の高い広々とした空間に20席ほどを配したスペースで、上質なイタリア料理を楽しむ贅沢な時間を供している。

一流シェフとして誰もが認めるようになった今も、原田氏の素材への執着は並々ならないものがある。休日となれば気になる店を食べ歩き、美味しいといわれるものは取り寄せる。築地で良いものが揚がったと聞けば、買い付けて自宅で調理する。そんな終わりなき素材探求に一役買ってくれているのが、数年前よりともに暮らす氏のパートナーだ。

「1日のうち9割近くは食べ物のことを考えていますが、そういう意味では、彼女も食が大好きですし、僕が知らないいろんなところから情報を持ってきてくれるんですよね。知識の幅も広がりますし、とても有り難く感じています」