以前、同研究所には「豚肉製品ですけど、ハラルマークは取れますか?」といった問い合わせがきたこともあったという。最近では多少認知度が高まり、極端なものはこなくなったというが、いまだに認識が低い企業も少なくないという。

キユーピーのマレーシア工場。

「とにかく豚肉やアルコールを使用しなければいいのでしょう?」や「ハラルマークさえ取れればビジネスができるだろう」といった安易な考え方の企業も多い。また、ハラルはムスリム以外の人が食べても別段問題はないのだが「専用食なのでは?」といったイメージを持つ人も。

森教授はイスラムビジネスに取り組まんとする企業にまず求めるものとして「イスラムの考え方を理解すること」を挙げている。イスラムの政治、経済、文化、生活の根本をなす行動規範のことを「シャリーア」といい、これがイスラム研究の中心となる「法」だ。「シャリーア」はムスリムの生き方そのものといってもいい大切なもの。食品などの禁忌にはそれぞれに神聖な意味合いがあり、ただ機械的に取り除けばよいというものでは決してない。

(Getty Images=写真)

ISOのように認証が世界統一されていないことも日本人にとって誤解を招きやすい理由の1つだろう。イスラム圏以外にも認証機関はあり、日本国内にも日本ムスリム協会のほか4カ所ある。日本におけるハラル認証取得手続きは、認証機関に問い合わせをして申し込み、審査と認定を受けるという段階を経る。森教授によると、申請から取得までの期間は商品の特性などによりさまざまなので、一概に平均は出せないという。海外の認証機関と提携している場合、日本で認証を取得して輸出することもできるし、最初から海外の生産国で取得し、そこで販売するという場合もある。たとえば、マレーシアの認証機関であるJAKIM(マレーシアイスラム開発庁)は日本ムスリム協会、日本ハラール協会を海外認証機関として正式に認定している。

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