当時の上司は、現地採用の社員だった。転勤がなく、長年にわたる地元での活動から豊富な人脈をもっていた。

そこで私は、「私の上司は地元ではこんなところで顔が利くんですよ」といった話をしてまわった。上司の人脈に触れると、ほとんどのお客さまが関心を示した。

私は、上司の人柄も売り込んだ。上司は、部下である私の数字のために一肌脱いでくれる人だった。損害保険会社時代の同期は、ほとんどが東京の一流大学の出身者だった。そのため、私は入社したとき、人事部長からは「お前がいちばんバカだ」と言われていた。

取締役や社長になど、なれないことはわかっていた。

それであれば、実績でトップになるまでだ。

一方、上司は現地採用のため、本社での出世レースとはもともと無縁である。それもあり、「よし、俺の代わりに江上を出世させてやる!」と、宣言していた。そして、「俺の人脈は全部使っていいぞ」と、私が実績をあげられるよう、全面的にサポートしてくれた。

男気のある人なのだ。

こうしたエピソードを披露しながら、

「私の上司は決して、お客さまに損をさせません」
「人が喜ぶことを、徹底的にする人です」

と、私は上司の人柄をアピールして歩いた。

何の力もない20代の社員であれば、自分のことより、上司がもつ人脈や人柄、価値観を語ったほうが、相手は上司も含めた広がりで話を聞いてくれる。

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プレジデント2012.1.30号「一億稼ぐ人の時間術」より。(年収1500万円以上=n307、年収500万円台=n306)

どんな上司であっても、悪口を言うなど論外。少なくとも上司の悪口を言って出世した人間は見たことがない。

もうひとつ、積極的に活用するといいのが、会社のブランドだ。

サラリーマンなら誰でも、会社の名前を背負って仕事をし、会社のブランドを活用していると思っているかもしれない。しかし、企業理念や設立の背景、歴史や実績などを含めた会社のプロフィールを知っているだけでは不十分だ。

自社の情報を得るにも、それなりのリサーチは必要だ。ところが案外、この部分の努力を怠っている人は多い。たとえば、歴代社長や関係者が書いた本があれば、それを読むといったようなことだ。こういった資料にこそ、創業の原点となった会社の志が眠っていたりする。

そういった知識を披露することで、まだ未熟な新人であっても、ほかの営業マンに一歩も二歩も差をつけることができるだろう。

【年収1億を生む黄金則】武器がないのであれば、上司の人柄や実績、人脈を徹底的に活用する。

(※『プロフェッショナル ミリオネア』(プレジデント社刊)第4章「さらけ出す、信頼を得る」より)

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