早めの取り組みで
将来の病の芽を摘む

生活習慣病が発症するまでには、一般的に10年以上もの長い時間がかかる。早い段階で気を付けていれば、後の疾病リスクは大幅に下がるのだ。

「メタボリック症候群の診断基準に腹囲があります。男性ですと、85センチ以上を基準オーバーとしていますが、そもそも自分で腹囲を正しく計測するのは難しい。それよりも、体重をもとに算出するBMIを基準値以内に収める方が分かりやすいでしょう」

BMIは、「体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)」の計算式によって導かれる、世界でも広く使われている体格指数だ。メタボ健康診断ではBMIが25.0以上あると肥満と判定される。

「いわゆるメタボ健診は、生活習慣病に特化した内容で精度も高い。健診のデータを毎年記録していくと、基準値内であっても将来的に問題が出てきそうな項目を早く見つけることができます。ビジネスと同様に、健診のデータも有効に活用してください」

 明確なデータという「事実」を知ることは、自身の意識を変えることにもつながる。原プレスセンタークリニックでは、検査の30分後にはデータが検出され、医師と患者がその場でデータを共有しながら診察するという体制を整えている。

周囲との「共同戦線」で
ダイエットしやすい環境に

では、具体的に体重をコントロールしていくには、どうすればいいのか。原院長は「食事の改善、生活習慣の見直し、定期的な運動という、“王道”に勝るものはない」と断言する。
 まずは「食事」の改善から見ていこう。40代以降は基礎代謝量が落ちるのに、20代の頃と同じものを食べていては、太るのは明白だ。量にして、10~15%ほど減らすのが適切だという。

「男性に人気の天丼、かつ丼、ラーメンは、糖質と脂質を摂り過ぎる“メタボ食”。小鉢などのついた和食の定食に替えて、野菜から先に食べてみましょう。また、仕事中の間食もやめてください。“ながら食い”は食べ過ぎに直結します。間食をやめただけで、検査値が大幅に改善した人もいます」

アルコールの過剰摂取が肥満の原因となっていることも多い。週に1~2回は必ず休肝日を設け、1日に飲む量はビールなら350㏄、日本酒なら1合が目安だ。

また、清涼飲料水の摂り過ぎも問題だ。飲料に含まれている果糖は甘味が強く、多量に摂り続けると血液中の中性脂肪が上昇しやすくなる。アメリカでは、肥満や生活習慣に由来する2型糖尿病の発症に関与しているとの疫学調査もあり、日本でも果糖の過剰摂取と生活習慣病の関係が指摘されている。のどが渇いたら、できるだけ水かお茶を飲む習慣を身に付けたい。

そして、さらなるハードルの高さを感じてしまうのが「運動」だろう。忙しいビジネスパーソンにとっては、時間を確保するのが悩みのタネ。しかし、

「わざわざジムに行かなくても、毎日1駅分歩く、極力エスカレーターやエレベーターを使わない、オフィスでは3階分は階段を使う。こうして意識的に体を動かせば十分です」

このように毎日の生活を改善すると、3カ月を経過した頃から、検査値に変化が表れる人も多いという。

「1人で取り組むと挫折しやすいので、早めに周囲にカミングアウトし、ダイエットに協力してもらうことも重要でしょう。いまや男性の4人に1人はメタボや高血糖という時代ですから、仲間と一緒に取り組むのもいい。生活習慣病を予防するには、自分の健康は自分でマネジメントするという意識を持つこと。それが、サインに気づくための最初のステップです」