都心か郊外かによっても異なるが、月々の賃料は近隣の家賃相場並み、都心部ならトータル10万円台後半で暮らせるように設定されている。

「老後の収入と支出を考えると、現役時代に年収1000万円くらいで比較的裕福に暮らしていた人は、リタイア後に生活レベルを落とすことができず、収入減とのギャップに苦労するかもしれません。たくさんの貯金があったり、はじめから、年収600万円世帯の暮らしを実践できていれば、問題はないのですが……」

比較的軽い要介護状態で高齢者向け住宅に居住すると仮定して、家賃が月7万~10万円、そこに共益費や管理費が2万円、食費3万~4万円、介護保険や医療保険の自己負担分4万円が加わって、毎月20万円弱が老後の生活費と介護費用の目安となる。

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「要介護度」と「所得」によって利用施設は変わる

「厚生年金の支給額が1人に月々15万円あるとして、プラス月々15万~20万円使えるくらいの貯蓄額があれば、かなり安心して暮らすことができますね。もちろん求める生活レベルによって金額は異なりますが、これまでのように年金と退職金で老後の暮らしを賄おうと考えている人にとっては、正直なところ厳しい時代です」

さらに、高齢者向け住宅に入居さえすれば安泰というわけでもない。より重度の介護が必要になったり、認知症がひどくなったりした場合には「サービス付き高齢者向け住宅」では対処しきれなくなるケースもある。「高齢者住宅情報センター」のセンター長、米沢なな子さんはこう指摘する。

「ひと口に“サービス付き”といっても、制度がはじまったばかりで実態はまちまち。介護とは関係ない分野から新たなビジネスチャンスとして進出してきた事業者も多く、きちんとニーズにこたえているかはわかりません。基準を最低限満たしていれば、登録できますからね。

介護施設やクリニックを併設して手厚いサービスを提供している優良な住宅もあれば、基準通りの安否確認と生活相談の担当者が日中に常駐するだけのサービスしか提供されない住宅も少なくないでしょう」

後者の場合は、せっかく入居しても介護度が進めば退去を余儀なくされ、最後まで住み続けられなくなってしまう。入居を検討するときは必ず複数の住宅を見学して、具体的な仕組みやスタッフの質をしっかり確認する必要があるというわけだ。