これまでの価値観はすべて捨てる

――13年3月28日に中期経営計画を発表してから半年が過ぎ、事業部制の復活にも踏み出しました。いま、社内にはどんな変化が起きていますか。

【津賀】15年度を最終年度とする中期経営計画「Cross-Value Innovation 2015(CV2015)」では、これまでの中期経営計画の策定方法を大きく変更しました。また、売上高の指標をなくし、利益目標、キャッシュフローの目標を掲げるなど、求める指標を大きく変えました。

一方、組織についても、昨年10月に本社部門を改革し、今年4月からはドメイン制を廃止し、事業部制をスタートするとともに、カンパニーという枠組みへと再編しました。また、49事業部のすべての数字を月次で明らかにしています。

これまではドメインという単位で数字を見ていたわけですが、このなかにはいい事業もあれば、悪い事業もある。それらをひっくるめて、ドメインという単位の“どんぶり”で数字を見ていたわけです。ドメインでは1兆円単位という「どんぶり」でしたが、事業部制に移行してからは、大きくても4000億円規模。その結果、いままでよりも早く課題が見え、改善に向けて早く取り組みはじめた。

この半年間は、この仕組みがうまく回り出すのかどうかを見極める期間だったともいえます。私は、今年4月から、事業部への直接訪問を開始しています。全49事業部のうち、25事業部を訪問しました。話をすると、この事業部は明るいな、あるいは暗いな、なにか課題があるなということを直接感じますね。

――社内にどんな課題を感じていますか。

【津賀】パナソニックにとって最大の課題は、赤字事業が残っているという点です。赤字事業は49事業部のうち8事業。なにが問題であるのかを明確にして、赤字解消に向けて取り組みはじめたところもあれば、残念ながら赤字脱却への道筋が見えない事業も2、3ある。

もうひとつの課題は、国内と海外との認識にまだ差があることです。パナソニックの将来の方向性を示したものの、日本の組織は動きだしたが、海外のある国においては、パナソニックがお客様にどう貢献できるのか、新たな方向性の上でどうブランドをプロモートできるのか、という議論が道半ばです。世界のそれぞれの市場において、パナソニックのあるべき姿を描いてもらわないといけないと感じています。