あえて完成度の低い商品を出す“ゆるさ”も、玩具には必要だと心理学者の植木理恵氏は指摘する。

「実は、子どもにとって究極の玩具は棒きれなんです。道端に転がっている棒きれを拾わずに無視できる子どもはいないという臨床データがあります。武器としてブンブン振り回したり、何かに見立てて遊ぶ。想像と改造の余地があればあるほど、子どもたちは夢中になって遊び続けます」あえて確信犯的に商品の完成度を下げて余白をつくるところが、大人向けの遊びと異なるところ。大人は完成度の高いものを求めるからだ。今年発売40周年を迎えた「トミカ」の遊び方は、ほとんど余白だらけだ。

マーケティング本部リーダーの本多秀光氏はトミー出身。トミカのライセンスビジネスを手がける。
マーケティング本部リーダーの本多秀光氏はトミー出身。トミカのライセンスビジネスを手がける。

「ブランドを守り続けて40年。82%の子どもがトミカを一人で遊んでいます。お父さんの乗っているクルマや、街で見かけるゴミ清掃車などを中心に買い、思い思いに遊び方を工夫します」(トミカマーケティング本部・本多秀光氏)

トミカは発売からほとんど機能も形も変化せずに売れ続けている。

「作り手はいろいろな新機能をつけようと考えてしまうものですが、いつの時代でも子どもが欲するものは、丸くて、自由度が高くて、やわらかくて、派手なものです。だから基本的なフォーマットを守ることが重要です」(植木氏)それでは、「ベイブレード」のヒットの秘密はどこにあるのか。現代に蘇るベーゴマが子どもたちの心をとらえて離さぬ理由を、開発チームの高岡悠人氏はこう分析する。

「ボーイズホビー、いわゆる男の子向けの玩具にはヒットの3条件があります。(1)バトル(2)カスタマイズ(改造)(3)コレクションです。とにかく男の子は勝負ごとが好きですから、対戦相手との勝敗が明確につく『ベイブレード』は少年を魅惑し続ける。昔のベーゴマは、自分で削ったりして改造していましたが、現代版ベーゴマ『ベイブレード』は1つのコマを4つのパーツに分解することができるため、それらを自在に組み合わせることでオリジナルのコマを追求することができる。“俺の『ベイブレード』最強! おまえのより強い!”と自慢できる。組み合わせは最大で14万通り。当然コレクション魂にも火がつきます」子どもたちは平均して7、8個の「ベイブレード」を所有している。コアファンだと20個以上もザラで、「僕は100個持っている!」と豪語する子もいる。子どもは負けず嫌いなのだ。

(小原孝博、室川イサオ、岡本 凛=撮影)