夫に家事をさせるためのひと言

Aさんが言い方を変えていたらどうでしょうか。「こんなときに本当に申し訳ありません。病児保育に預けられたらすぐに向かいます!」と言いつつ、実際にはプレゼンに間に合いませんでした。午後になってようやく会社に現れたAさんは詫びる以上に悔しがります。自分もぜひ参加したかったのに、と。あなたはプレゼンの内容と反応を丁寧に伝えて、Aさんにフォローアップを依頼し、一緒に受注を目指す意欲を新たにするでしょう。

家庭でも同じです。バリバリ働く妻がときには残業や休日出勤せざるを得ないことぐらいは男たちもわかっています。

でも、それが当然のようには振る舞われたくない。自分を押し殺してでも家族のために働いている男性としては、「(家長の)あなたに家事なんてさせてゴメンね」のひと言がほしいのです。そのひと言があれば、家事を今より多めに引き受けることも厭わないでしょう。厭う男性はそもそも妻に愛情がないので別問題です。

矛盾を前提にしたたかに生きる

現在の30代40代は、サラリーマンの父親と専業主婦の母親に育てられた人が大多数です。「男は仕事優先、女は家庭優先」という概念が体にしみついています。この概念が正しいか正しくないかは別として、体質を急に変えることはできません。それでいて、仕事仲間の総合職女性に対して「あなたは家庭があるのだから早めに帰っていいよ」と声をかける余裕もない。せつないことです。

このような状況で働く女性が選ぶべき道は「矛盾を前提にしたたかに生きる」ことでしょう。仕事場では仕事優先、家庭では家庭優先の立場を明確にし、本音ではなく建前を駆使して周囲の協力を取り付け、十分な睡眠時間を何としても確保してください。健康を害しては家庭も仕事も守ることができないからです。

大宮冬洋
1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリング(ユニクロ)に就職。退職後、編集プロダクションを経て、2002年よりフリーライターに。ビジネス誌や料理誌などで幅広く活躍。著書に『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ぱる出版)、共著に『30代未婚男』(生活人新書)などがある。
実験くんの食生活ブログ http://syokulife.exblog.jp/