若者を本気で育てるための2つのステップ

冒頭のような悩みを言う人に対して、私は「その若者を本気で育てようとしましたか?」と問い質すことにしている。若者を本気で育てるには、次の2つに取り組む必要がある。「若者の社会化」と「若者の組織化」だ。

1つ目の「社会化」とは、文字どおり学生気分を抜けさせ、仕事に携わる社会人として一人前にすることだ。

マクドナルドの場合、新人全員にクルートレーナーが付き、仕事でわからないことがあれば手取り足取り教える。そのトレーナーになるためのプログラムまで用意するという念の入れようだ。新人を頭ごなしに叱ろうものなら、意気消沈し辞めてしまうだろう。それを防ぐため、クルートレーナーには新人クルーの一挙手一投足に目を配り、何かが上達したり仕事上の気働きを発揮したりしたら、すぐに褒めることが奨励されている。同社ではこれを「即時フィードバック」と呼んでいる。

新人が熟達者から学んでいく学習過程を「認知的徒弟制」と名づけたのは米国の認知科学者、ブラウンだ。認知的徒弟制は、I.弟子が親方の仕事を見て学ぶ(モデリング)、II.親方が手取り足取りで弟子を教える(コーチング)、III.できそうな仕事を弟子にやらせてみて、できそうもない仕事は親方が支援して完成させる(スキャフォルディング)、IV.親方が手を引いて自立を促す(フェーデング)、という四段階に分かれている。

マクドナルドでは、クルーとクルートレーナーはこの徒弟制の間柄にある。大切なのは、IIからIVにかけて適度な「ほったらかし」を行うこと。親方が終始弟子につきっきりでは弟子はいつまで経っても一人前になれない。かといって、最初から突き放されても途方に暮れるだけだ。最初はつきっきりで教え、徐々に関与を減らしひとりでできるように見守る。親が、補助輪を取った自転車の乗り方を子どもに教えるような感じだ。

皆さんの職場では、新人はこの認知的徒弟制の関係下に置かれているだろうか。そうでないのに、「新人が育たない」とグチるのは怠慢以外の何物でもない。