グローバルな視点でのサプライチェーン再構築は大手の外需企業に深く関わってくる。ただ、「規模が大きい企業は雇用を守る使命もあるので、なかなか大胆な変化は遂げられない」(広木氏)のも確かである。

「強いて大手に的を絞って注目するなら、トヨタ自動車が復活を成し遂げるか否か。インフラ整備の課題もあってEV(電気自動車)への移行はなかなか進まず、まだしばらくはハイブリッド車が優位に立つだろう。もう1度、トヨタが日本のエースとなることを期待したい」(広木氏)

では、中小規模の新進企業に関しては、特にどういった分野に携わるところが先々、期待できるのだろうか?

やはり、東日本大震災が大きなヒントを提示していると広木氏は語る。

「大震災を機に、その重要性が再認識されたのがクラウドコンピューティングやスマートグリッド(次世代送電網)、それにツイッターやフェイスブックのようなSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)だ。サーバーの分散をはじめとするクラウド化が推進されることは国内の大手電機にもチャンスとなりうるものの、これらの企業がいわゆる“大企業病”を患っているのも事実」(広木氏)

従来、企業や個人はソフトウエアやデータなどを自ら個別に保有・管理してきた。当然、ハードディスクやサーバーなどが支障をきたせば、そのダメージをまともに受けることになる。しかし、ソフトウエアやデータの保有・管理をクラウド上(インターネットの向こう側)で行えばそういったリスクを軽減できるし、最低限の接続環境を整えるだけで済むので、コストも大幅にカットできる。国内の電機大手がこのチャンスを生かせるかどうかが注目される。

加えて、原発事故を受けて国のエネルギー政策は大幅な見直しを迫られているが、より効率的で省エネ性も高めた次世代送電網の導入にはむしろ加速がつくといえよう。ところが、広木氏によれば、

「スマートグリッドは日本としての国策であり、関連企業は潤うものの、エースと呼べるような突出したリーディングカンパニーは出づらい」