なぜ総合学習に力を入れるのか

大学合格実績に変化がないとすれば、「なんのための中高一貫化か」と、疑問を持つ向きも多いだろう。

これに対し高岡校長は「中学開校の目的はそもそも、難関大学への進学者を増やすことではありません。だからカリキュラムも、中学で高校の学習を行う“先取り”教育を取り入れていないのです。千葉高校の中高一貫校化はあくまで将来、社会に貢献できる人材を育成することが目的です」と説明する。

「先取り学習」はしないものの、千葉中から千葉高へは全員が進学できるため、受験の心配がなく、その分、教育への工夫が凝らされている。その結果、より高度な教育ができるのだと大山光晴副校長は語る。

“先取り”をやらないからといって、日々の授業が一般的な公立中と同じかといえば、そんなことはありません。たとえば、生徒が高校へ進んだときに『あ、中学で勉強したあの内容の応用か』と気づけるよう、中学で学ぶ内容が高校のどんな内容に結びつくかといった話はよくします。千葉高の特徴はなんといっても、教科ごとに先生方が工夫に工夫を重ねて作る、深みのある独自教材にあるのですが、そのメソッドを中学でも取り入れています」(大山副校長)

高岡正幸先生
千葉県立千葉中学校・千葉高校の校長。部活や授業に顔を出し、生徒と積極的にコミュニケーションをとる。専門教科は国語。

また、千葉中は特に総合学習に力を入れていると高岡校長は語る。

「もともと好奇心の強い子供が多いので、教員側はあの手この手で、好奇心を刺激してやる。すると、子供たちは自ら驚くほどの知識を吸収していきます」

たとえば千葉中の3年生がほぼ全員参加する10日間の海外異文化学習では、MIT(マサチューセッツ工科大)やハーバード大などを訪ね、ノーベル生理学・医学賞受賞者である利根川進さんはじめMIT研究者による特別講義を受ける機会などを設けている。国内でも各大学や研究所、医療機関などから講師を招いて講演会や特別授業が頻繁に開催されている。

学年を超えたゼミ活動で、課題を発見し追究する力を養う総合学習にも積極的だ。研究成果は「アカデミア」として年2回、全校生徒の前での発表の場を設けている。

そうした成果の一例ともいえるのが、自律型ロボットによる国際的なロボットコンテストWRO(WorldRobot Olympiad)で受けている高い評価。千葉中は上位入賞の常連になりつつあるのだ。