ウルトラテクノロジスト集団「チームラボ」を率いる猪子寿之氏。チャーミングな笑顔と物怖じしない言動が強烈な印象を残すが、独特のキャラクターに目を奪われていてはいけない。猪子氏の真骨頂は、いまの時代を鋭くつかむ観察眼にある。若い世代を代表する論客に、いまの日本はどう映っているのか。組織論からリーダー論まで、田原氏が迫る!

20世紀がなかったアジアは21世紀を肯定して成長する

【田原】あらためて聞きます。猪子さんは、具体的にどういうことをやるのが好きなの?

【猪子】うーん……。新しい体験を、簡単に言うとすごい広い意味でアート的なものをつくるのが好き。

【田原】でも、最初は企業のホームページをつくっていたんだよね。

【猪子】はい、創業期からデジタルアート(コンピュータを使った芸術作品)もやっていたけど、そっちは誰も注目してくれなかったから。

【田原】猪子さんはアメリカに留学した経験もあるし、東大で最先端のことも学んだ。なのに、なぜホームページなんてやってるのかなと思っていたんだけど、狙いはアートのほうだったのか。いまもホームページはつくっている?

2011年、「百年海図巻」「チームラボハンガー」が文化庁メディア芸術祭審査員推薦作品に。

【猪子】いまはウェブとデジタルアートの区別があまりつかなくなってきましたよね。だからあまり意識してないけど、あえて分けると、いまは6、7割ぐらいウェブです。

【田原】猪子さんたちが新しいものを生み出していることについて、僕はとっても頼もしいと思う。でも世界的に見ると、iPhoneにしても、Googleのサービスにしても、新しいものはアメリカからやってくる。なぜ日本ではできないのですか。

【猪子】なんだろう。大きく言うと、アメリカの西海岸、つまりシリコンバレーは、未来を全面的に肯定している。それに対して、日本は未来を否定している。その違いかな。